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・ 色々と設定は無視の方向でvv




   ハロウィン☆ナイト



 アメリカ合衆国某所にあるネイサン・マーラー宅が、二人の幼い姫君のハロウィンの為に、気合いの入った飾り付けをされていた。ジャックオーランタンを模したイルミネーションは勿論のこと、本物の南瓜のランタンも随所に置かれている。正面玄関では「HAPPY HALLOWEEN!!」とおどろおどろしい字が躍っていた。
 外で騒ぎたいであろう姫二人の為に、庭にこれまたハロウィン仕様のテーブルが置かれ、数々の料理が置かれている。
 世にも恐ろしい勢いで料理を腹に収めていく姫二人の面倒を見るのは、なんとも悩ましい魔女姿のネイサンで、ああっ! もう せっかくの可愛い衣装が台無しになるでしょう!! と言いながら二人の後ろについている。
 そのネイサンの魔女姿を見るたびに、ジェイムズはぎょっとしながらも、姫二人の為に屋敷から料理を運ぶ。堅物そのものの男が羽織るのはムンクマントで、頭には大きな悪魔の角をつけていた。
 庭の隅では吸血鬼伯爵の格好という洒落にならない格好をしたアンシェルが、静かに椅子に座って新聞を読んでいた。

 「グレゴリー格好いいーv」
 「格好いいーーvv」

 ノリの悪いアンシェルを尻目に、幼い姫二人――響と奏は、今しがた到着したグレゴリーの服に興味津々だ。グレゴリーの服は黒のカソックで、ロマノフに仕えていた頃は毎日着ていたものだったが、響と奏にこの姿を見せるのはこれが初めてだった。

 「これはカソックというのですよ。昔はよく着ていたんですが」

 銀髪をかきあげながら、長身のグレゴリーは腰を落として二人の姫君に笑いかける。

 「かそっく」
 「かそっく」
 「そう。カソックです」

 二十一世紀初頭に生まれた二人には、カソックという服装は決して馴染み深いものではない。
 この服を着てきてよかった…と、グレゴリーは姫二人を独り占めにして、内心満足げににやりと笑う。
 …が、そんなグレゴリーの至福の時間は長くは続かなかった。

 「ソロモン!」

 奏が嬉しそうに指差した先には、グレゴリーの憎き天敵である金髪の義弟が立っていた。グレゴリーが思わずソロモンを睨みつけた時には、既に姫二人はソロモンに向かって駆け出して行った。
 グレゴリーが盛大に舌打ちした。

 「ソロモンも魔法使いだー」
 「魔法使い! お揃いーー」
 
 可愛らしい魔女の仮装衣装に身を包んだ響と奏がぴょこぴょこと跳ねると、二人のかぶる三角帽子が危なかっしく揺れた。二人は目の前に現れた白い魔法使いを、目を輝かせながら見上げる。

 「お二人とお揃いとは光栄です。…お二人とも、とてもよく似合っていますよ」
 「響姉様の方が可愛いの!」
 「そんなことないよ。奏の方が似合ってるよ」

 お互いに向かって「そっちの方が可愛い!!」と言い合いを始めた二人を微笑ましく眺めながら、ソロモンはアンシェルの方に目をやってから頭を下げる。アンシェルは軽く頷いた。
 グレゴリーは何故かいつも以上に敵意を身体中から発散させていたので、ソロモンはいつも通りの微笑を向けるだけで、他には何もしない。
 まだグレゴリーと話してもいないのに、とソロモンが思っていると、

 「あらぁ、ソロモン。遅かったじゃな~い?」

 セクシーな魔女に話しかけられ、一瞬ソロモンは逡巡した。

 「すみません。衣装のことで少しトラブルがあって。…それよりもネイサン、よく似合ってますよ」 
 「あらぁ、本心かしらぁ?」
 
 ネイサンが腰をくねらせると、後ろにいたジェイムズが手に持ったお菓子の入った籠を落としそうになった。
 そのジェイムズを見て、響と奏が喚声を上げながらジェイムズに駆け寄る。
 籠の中へと姫二人が手を伸ばそうとした時、ジェイムズは二人の手が届かないように籠を高く上げ、二人から不満の声があがった。
 なんでー? どうしてー? という二人の声にぐさぐさと刺されて、堅物軍人の表情が哀れなものになっていくのを見て、

 「もう少し、待ってくださいね」

 ソロモンが言うと、頬を膨らませた二人が振り向いた。

 「どうして~?」

 二人のもっともな問いに、ソロモンは何も言わずににこにこと静かに微笑を浮かべ、ネイサンが屋敷へと戻ったのを確認してから、

 「……それはね……」

 大幅に、意図的に低くした声で、妖しい笑みをソロモンが口元に浮かべれば、響と奏は、期待に目を輝かせた。何かが始まる、と直感的にわかったのだ。
 
 「今宵がハロウィンの夜だからですよ……」

 木を揺らすそよ風すらも恐ろしく感じような声音で言った瞬間、屋敷の明かりが全て落とされた。どうやったのか、ランタンに灯されていた火も、全て一瞬で消える。
 真っ暗になった庭で、次は何が起きるのかとわくわくとしながら、小さな魔女二人はあちこちに視線をやる。

 「さぁ、二人とも。……ハロウィンの夜と言えば?」

 ソロモンがそう言うと、二人はぱぁ、と目を輝かせた。

 「呼ぶの?」
 「呼ぶの?」
 「そう、元気な声で呼んでくださいね」

 響と奏はソロモンの言葉を聞くと、いっせーの! と言ってから、大きく息を吸い込んで、

 『PHANTOM―――――!!』

 声を合わせて、叫んだ。

 「もう一度」
 『PHANTOM―――――!!』

 二人の声に応えるように、屋敷の屋根の両端にある巨大ライトが点灯する。それと同時に、屋根の側面でコウモリを形作る赤いイルミネーションが点灯した。

 「あと一息ですよ」
 『PHANTOM―――――!!』

 二人が叫ぶと同時に、屋根の両端から中央に向かって、大量のドライアイスが噴射される。すると、その中から人影が現れた。
 響と奏が喚声をあげる。

 『美しい二人の姫君よ! 今年も私を呼んでくれてありがとう!!』

 よく通る声が響き渡った瞬間、ドライアイスの膜が消えて、屋上に立つ者の姿が露になった。
 蝙蝠を模した仮面に、燕尾服、そして黒いマントをなびかせる謎の(?)男がそこには立っていた。

 『今宵はハロウィン。姫君達にはいささか危険な夜だと思うが……』

 言葉を発しながら、計算されつくした全身の優雅な振り付けを、謎の(?)男は難なくこなしてく。

 『まずは祝いの言葉を述べよう……。 HAPPY HALLOWEEN!!!』

 ばさぁ、とマントを広げる音を立てながら、二人に向かって腕を伸ばす謎の(?)男を、

 (……輝いてますねぇ……)

 ソロモンは微笑ましく見ていた。

 「はっぴぃはろうぃーん!」
 「はっぴぃはろうぃーん!」

 幼い魔女二人が答えると、謎の(?)男は満足げに口元に笑みを浮かべると、屋根を蹴った。
 跳躍の後、謎の(?)男は響と奏の前に仕えるように跪くとその姿勢のまま、

 「…姫君…」

 厳粛に言った。

 「どうやら姫君達を狙っている者がいるようだ」

 謎の(?)男が言うと、

 「食べちゃうわよーん♪」

 手を伸ばしながら、ネイサンが二人に迫った。
 笑いながらも、きゃーー!! と響と奏が叫びを上げる。

 「助けてーー!!ファントムーーー!!」

 ネイサンの魔の手から二人が逃げ惑いながら叫ぶと、

 「もし姫君達が私に、甘い宝をくれるというなら、私は一夜限りの騎士<シュヴァリエ>となろう」

 謎の男は答えた。
 それを合図に、ジェイムズがお菓子の入った籠を、響と奏に向けて差し出す。

 「これ、あげるから助けてーー!!」
 「助けてーーー!!」

 ジェイムズから籠を受け取り、響きと奏が言った。

 「姫君達が願うなら……」

 謎の(?)男はそう言うと、ネイサンに向かって、

 「悪しき魔女よ! 立ち去れ!!」

 雄々しく叫んだ。

「きぃぃぃぃぃぃぃ!! 可愛い女の子の生き血をすすってやろうと思ったのにぃぃ!!!」

 セクシー魔女は悔しそうな声をあげながら、どこかへと走り去って行った。

「ありがとう、ファントム!!」
「ありがとう、ファントム!!」

 響と奏はお礼を言いながら、謎の(?)の男を足元で飛び跳ねた。

  *   *   *

 謎の(?)男が加わったことで、ハロウィンパーティーは異様な盛り上がりをみせた。
 しかしそんな楽しい時間も、あっという間に過ぎてしまい、謎の(?)の男が恭しく響と奏に頭を下げる時間がついにやってきてしまった。

 「さて…もう夜も遅い。姫君達はもうベッドに行かなければ」
 『はーい』

 謎の(?)男が言うと、響と奏は素直に口を揃えた。

 「名残惜しいが……来年、また会おう」
 「ばいばーい」
 「…良い夜を」
 
 謎の男はそう言って地を蹴ると、屋敷の屋上へと着地した。
 そして、二人に背を向けたまま、優雅に手を振る。現われた時と同じようにドライアイスが噴射され、謎の(?)男の姿がその中へゆっくりと消えていく。

 その時、

「カール、また明日ねーーー!!!」
 
 奏がそう言った瞬間、周囲の空気が凍りつき、謎の(?)男の姿は突然消えて、二度と現われなかった。
 
 リハーサルでは空に向かって飛んでいき、最後にまた「HAPPY HALLOWEEN!」と言って去って行く筈だった。と、いうことは……。

 足を踏み外して屋根の向こう側に落ちたのでしょうね、とソロモンは考えていた。


   *   *   *

 ソロモンがカールの部屋に行くと、いつの間に着替えたのか、アオザイ姿のカールが、電気もつけずにベッドの上で脚を抱えて小さくなって座っていた。
 カールは俯いたまま、呟く。

「僕の正体に気づくとは…やはりディーヴァの子だ…聡いな」

 一人称が『僕』になってしまっていることから、余程意気消沈しているのだろう、とソロモンは思いながら、カールの隣に座る。
 間近に見える、カールの落ち込んだ姿すら魅力的に見えるのだから自分は相当の重症だ…とどうでもいいことを考えながらも、ソロモンは幼い姫二人のことを思う。
 本当は響も奏も大分前からファントム=カールと気づいていた。しかしどうやらカールはファントムの正体はバレていないと思っていたようだったから、「バレていますよ」と言うのはなんだかカールが可哀相なので今まで黙っていたのだ。
 声をかけようとソロモンが口を開くと、カールはそれを手で制する。

 「いいんだ、ソロモン。きっとこうやって子供はレディになっていくんだ……。来年からは、私はファントムをやれないな」

 ファントム=カールとわかった上でも、響と奏の二人は、『ファントム』とのハロウィンを十分楽しんでいた。来年もファントムをやればきっと二人は喜ぶだろう。ソロモンはそう考えたが…それを言葉にすることはなかった。

 「それで、いいじゃないですか」

 代わりに口にしたのはそんな言葉だった。

 「何?」
 
 ソロモンが言えば、カールは訝しげに顔を上げる。やっと自分を見てくれたカールに、ソロモンはにっこりと笑った。

 「来年からは、二人だけのハロウィンをしましょうよ。…響と奏は、他の兄弟に任せて」

 如何に主の娘達といえど、自分とカールの時間を奪う存在を払えるならば、ソロモンは手段を選ばない。
 カールが可哀相だという理由で、カールとのハロウィンの夜を主の娘達に譲っていたが、ハロウィンと言えば、カールがもっとも表情を輝かせる日の一つ。そんな日のカールを目に写すのは自分という存在だけでいい。

 「…とんでもない騎士だな」
 
 ソロモンの意図が読めたのか、カールが揶揄するように言うと、ソロモンは喉の奥でからからと笑った。

 「貴方を手に入れる為なら、何でもしますよ。特に…」

 ソロモンはカールの顎に手をやり、自分の方へと向かせた。
 
 「貴方との、ベッドの為なら」

 空いたもう片方の手でカールの細腰を抱きながら、ソロモンは誘うような音色を喉の奥から響かせて、言う。
 カールはそれに応えるように、笑みを浮かべてから、

 「おかしいな。外に魔除けのランタンを作っておいたというのに……。何故悪いものが入ってきている?」

 窓にかけてあるランタンに目をやった。

 「僕には効かないみたいですね。幸運なことに」

 カールの腰にやった手を妖しく蠢かせながら、 

 『TRICK OR TREAT』

 ソロモンがカールの頭の中に話しかければ、

 「残念ながら、今は、手持ちがないんだ…」

 カールはソロモンの頬に手をやった。

 「私でどうだ?」

 その答えにソロモンは満面の笑みを浮かべる。

 「HAPPY HALOWEEN」

 ソロモンの言葉に、同じ言葉を返そうとしたカールの唇を、ソロモンのそれが塞いだ。



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 少し遅れましたが、はっぴぃはろうぃんvvv
 BGM「バンザイ!ヴィランズ!」
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