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 某サイト様の絵を見る → コーヒーっていいな →コーヒー=ゴドー検事だ! →ゴドー検事=『珈琲は闇色の薫り』だ!(テーマ曲) →『珈琲は闇色の薫り』を聞く → ああ、ソロカルでほろ苦いオフィスラブとかありかも… という経緯で書いたSSです。細かい所はあまり突っ込まないでくださいw *タイトルは逆転裁判3の曲名より拝借



   珈琲は闇色の薫り



 ビルが群れをなす街の一角に、その会社はあった。
 マジックミラーで囲まれたビルは午後の晴天を映して、青く染まっている。カール・フェイオンは青いビルの三十階にある自分のオフィスにいた。
 この日のカールのスーツはダークグレー。長い髪は今日も隙のない、黒く艶やかな直線を描いていた。
 難しい仕事が一段落つき、安堵の息を吐きながら、カールはコーヒーを淹れる。その濃厚な薫りに鼻腔をくすぐられながら、カールがカップを手にしようとした時、オフィスにノックの音が響いた。
 カールは顔を上げて、どうぞ、と告げる。
 ドアが開き、そこから顔を覗かせた人物に、カールは目を見開いた。
「こんにちは」
 そこに立っていたのは、白いスーツを着た、金髪碧眼の男性――ソロモンだった。
 カールが目を見開いたのには理由がある。本来、ソロモンは此処にいてはいけない人間なのだ。二人は学生時代、恋人同士だったが、目指すところが違って、互いにライバル会社に入社することになってしまった。つまり、今この状況は、ライバル会社の社員が、真昼間に堂々と乗り込んで来たということである。
「おまっ」
「しー。大声は出さない方がいいですよ」
 ソロモンは唇の前で人差し指を立てて、カールの横まで優雅に歩みを進めた。
「何故ここに」
「こちらでちょっとした交渉事がありまして…先程、早めに終わったので、ついでに寄らせて貰ったんですよ」
 カールが声を抑えて訊くと、ソロモンは何事でもないかのように、微笑みながら答えた。
「『ついで』に寄っていい場所ではないと思うが」
「これは手厳しい…学生の時はあんな甘い時間を過ごしたのに」
「学生時代と今は違う」
 ソロモンと会う事が出来て、内心カールが嬉しくなかったかと言えば嘘になる。だが、互いに社会人としての立場がある以上、浮かれた姿は見せられなかった。
 ソロモンはカールが淹れたコーヒーのカップをちらりと見てから、
「僕達の関係は、さながらこのコーヒーのようですね」
 カップを手にとり、飲んだ。砂糖もミルクも入っていない、濃厚なブラックを。
 座っているカールからは見えなかったが、ソロモンが唇をつけた所から、コーヒーの闇色に小さな波紋が出来る様子を想像して、
「砂糖は、いらないのか」
 カールは意味ありげに、首を傾げて言った。
「…頂いていきましょうか」
 ソロモンはカップを置き、腰を屈めて、カールの顎を指先で引き寄せる。
 コーヒーの薫りが深くなった、とカールが思った瞬間にはキスが始まっていた。カールはソロモンのスーツの袖にそっと触れる。背中にまで手を伸ばしたかったが、それをやると、お互いに悪い方向に気分が盛り上がるのは目に見えていた。ソロモンまたもう片方の手はカール肩に軽く置いているだけだ。
 久しぶりのキスは、自分が覚えていたものよりも、遙かに苦かった。
 ソロモンは一瞬だけ寂しそうな顔をカールに見せてから、
「…あまり長い間いて、嫌われても困りますからね」
 そう言って、立ち上がる。
 名残惜しかったが、仕方ない。カールは小さく、ああ、と言って見送るしかなかった。
 ソロモンが立ち去った後のオフィスには、闇色の薫りが漂っていた。



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2008/5/12

 これでもほろ苦いオフィスラブを目指しました。

 難関大学主席卒業するといきなり自分のオフィス+秘書がつく…なんていう国もあるそうで。いいないいな。
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