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 ご注意書き。
 このお話は、ご都合主義万歳な話です
 そして、ある登場人物は、小説版とマンガ版をMIXした仕様になっています。
 もう一度書きますが、このお話は本当にご都合主義です。
 そして、アニメ版でもしソロモンが生きていたら、というそんなお話です。
 それでもよろしければ、お進みくださいませ。









お久しぶりです。
あの事件が終わってから、四年の歳月が流れましたが、貴方は如何お過ごしでしょうか。

わたくしが貴方に最後にお会いしてから、とてもとても長い歳月が経ちました。

四年前の事件に関わることが出来なかったのは大変残念でございます。
もしも私が、四年前の一連の事件に関われていたなら、
もっと面白いことにしてやったのに!

おっといけない、話がずれました。

わたくしは、貴方をお呼びする案内人で御座います。
別紙に記載しました、時刻・場所へと貴方に来ていただけたなら、
これほど喜ばしいことはございません。

オ前ハ本当ナラ四年前ニ死ンデイタ筈ナノニ。
ドウイウワケダカ、マダオ前ハ生キテイル。
生キ残ッタ罪ヲ贖ウガイイ。

おっと、失礼しました。つい本音が。

貴方を厭う案内人

貴方に返り討ちにされた者
貴方に死神の鎌を振るわれた者
貴方が死の呼び水となった者

そして、貴方に地獄へ堕とされた者

死者と生者の境界が失われる今宵の宴にて、貴方を一同、お待ち申し上げております 

Happy Halloween!

Григорий Ефимович Распутин




<十月の果てへ踊れ 1>




 例えば、何もない真っ白な部屋。
 距離感を麻痺させるような壁に囲まれて、自分以外の何も存在していない部屋。
 そんなところに放って置かれれば、時間の感覚も空間を知覚する能力も失われ、人は間もなく発狂するという。
 では。
 真っ白とは決して言えないが、数年間全く変わることのない部屋で、時間の感覚を完全に失っている自分は、何なのだろう。
 生きているのか死んでいるのかもわからない。鎧戸を締め、さらに分厚いカーテンも掛けた窓の外のことなど知る由もない。
 ただ、変わることのない部屋でぼんやりとしているだけの自分は、狂っているのか、いないのか。そんなことを考えられるということは、狂っていない証左なのだろうか?
 ぼんやりとするか、気まぐれに淹れられる茶と菓子を口にするか、奇跡的に唯一残っていたかつての恋人の写真を見ているだけの日々。
 一体どれだけの時が経ったのかと考えていたら、あの事件から四年が経ったということを、先日ある者に言われた。
 カールを失い、主を失ってから四年。
 四年という月日は長いのだろうか短いのだろうか。……そんなことはどうでもいい。
 ソロモン・ゴールドスミスは、ソファに身体を横たえたまま、ガラスのテーブルに手を伸ばす。目的のものに指がほんの少し届かず、身体を起こしてから、ソロモンは写真立てを手にとって、再びソファに寝転がった。

 嗚呼、かわいいなぁ。
 
 セピア色に染まったその写真を見るたびに、ソロモンは甘ったるい溜息をつく。
 カールがまだ学生だった頃の、写真。緊張した面持ちで、けれど「笑って笑って」と言われて懸命に笑おうとしている、そんな写真。
 今でこそカメラは一般人が手にすることの出来る小さな玩具になっているが、当時はまだ、写真一枚撮るのに時間も金も労力もかかる時代だった。
 カールの写真が欲しいと言ったら、ソロモンの手に写真が渡るのが恥ずかしいのと、写真撮影そのものへの好奇心を必死に天秤にかけて、カールは唸りながら後者を選んだのだ。
 今、思えば。
 仏頂面をしていようが、怒ろうが、結局彼は、いつも最後には幸せそうな笑みを浮かべていたのだ。
 自惚れではなく、そんな顔をさせていたのは、自分の存在だったのだと、後になって思う。
 彼を裏切ってから、そんな笑顔を見ることがなくなって、初めて気付いたのだ。
 嗚呼、あの頃に戻りたいなぁ、といくら願ったところで、願うたびにそれが不可能だと思い知った。
 針が逆回りをする時計をいくら作ったところで、過去には戻れない。
 裏切った自分から、
 “それでも愛しているから、また恋人になってほしい”
 など言えるわけもなかった。
 だから、ソロモンは……。

「ソロモン」

 思考の海に沈んでいたソロモンを、男の声が引き揚げる。ソロモンは写真立てをテーブルに置き、大儀そうに身体を起き上がらせた。

「お茶をお持ちしました」

 そう言って、男―ハジは、ソロモンが飲むか飲まないかを聞かずに、勝手に盆をテーブルの上に置いて茶を入れ始める。
 薔薇の花弁が刻まれた金縁のティーカップに、鮮やかな紅色のローズティーが注がれる。咲き乱れる薔薇園を思わせる香りが立つ中、茶を淹れた者の手によって、青い薔薇の花弁がひとひら、浮かべられた。
 真っ青だった花弁は、一部を残して茶の紅を吸って紫に染まる。
 何か意図があるのか、とソファに座るソロモンが顔を上げて目で尋ねると、茶を入れた者――ハジは、首を横に振った。
 
「薔薇が見事に咲いていましたから、合うのではないかと思っただけです」

 ハジはいつも通りの無表情のまま、ぶっきらぼうに言う。言葉使いは丁寧だが、そこには彼の主に対するような敬愛の情は全くない。元々ソロモンもハジにそんなものは求めていないから別段気にはしない。最低限の礼儀が尽くされていればそれでよかった。
 ソロモンはハジの淹れた茶を飲みながら、部屋を見渡す。
 ここは、四年前に死んだアンシェル・ゴールドスミスの、EU内にある邸宅だ。
 実は、名義はアンシェルではないのだが、税金対策の為にアンシェルが作り出した架空の人物のものだ。
 普段使用する食器や家具以外、部屋は四年前と変わらない。一日中、花の世話をするか、掃除をするか、剣の稽古か、気まぐれにソロモンに何かを作るかのどれかの行動しかとらないハジの手によって、部屋の埃は毎日払われているから、屋敷の主がアンシェルからソロモンに変わったこと以外に、屋敷にはなんの変りもない。
 そんな、何も変わらない屋敷から一歩も出ないソロモンが、小夜とディーヴァの戦いから四年が経ったということに気づいたのは、少し前に、ハジが「あれから四年経ちましたね」と呟いたからだ。
 完全に月日の流れの感覚が麻痺していたソロモンには、「四年」が短いのが長いのかわからなかった。
 正直、何年経とうがどうでもいい。
 生きているのか死んでいるのかわからないような日々を送っているソロモンにとっては。

「ところで」
「……なんでしょう」

 ソロモンが物憂げに答えると、ハジがテーブルに置いた皮のファイルを手にとり、それを開きながら中身をソロモンに見せた。

「このようなものが届いていました」

 そこには、一通の封筒が挟まれていた。
 封筒を縁取る大仰な銀色の飾りではなく、ソロモンの目を捉えたのは、封筒の真ん中にある血色の封蝋だった。

「いまどき、このような封蝋を使う人がいるんですね……」

 ソロモンが呟き終ると同時に、ハジはペーパーナイフをソロモンに渡す。ソロモンは礼も言わず封を開けると、中に入っていた紙の感触に目を丸くする。
 中には羊皮紙が二枚入っており、一枚は地図が書かれたものであり、一枚には達筆な文字がつづられていた。
 メッセージの書かれた手紙の最後の署名には、こう書かれていた。

Григорий Ефимович Распутин

―― グレゴリー・エフィーモヴィチ・ラスプーチン。



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