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36話終了後の二人。
「狂おしいまでに」放送前に、嫌な予感がしながら書いたの物です。
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今はただ、お前のことを……。
Thanatos
光量を落としたテーブルライトが、かろうじて部屋を暗闇から護っていた。仕事をしようと思って机に出したパソコンが、結局電源を入れられることなく開けっ放しになっている。
ソロモンはぼんやりとベッドの上からパソコンを見ていた。シャツのボタンは全て外れ、腰の辺りまでは毛布がかけてある。朝にやれば仕事は十分間に合うだろうと、頭の片隅で考えながら、ソロモンは見事に仕事の計画を突き崩してくれた犯人――隣で横になっているカール――の黒髪に手をやった。
カールは肩をむき出しにしたまま、こちらを向いて、静かに目を閉じている。
『…やられましたよ』
頭の中に話しかけると、カールは瞳をうっすらと開いて、してやったりという感じで、悪戯っぽい笑みを浮かべた。ソロモンは苦笑しながら、カールの額にキスを落とす。
この日は本当に久しぶりに、何も考えずに、ただ本能の赴くまま求め合えた。…最近はいつも、頭の片隅に何か気がかりなことがあって、カールを抱く時ですらそんな状態だったのだ。
「…今日は、どうしたんですか?」
訊くと、カールはソロモンがどきりとするような、ふわりとした笑顔で、
「たまには…な…」
と答えた。
いつもはこちらが彼の体に手をまわしたりすれば、その手をはねのけたり、煙たがったりするくせに、この日はずっとカールはこんな調子だった。
自分が仕事を始めようとした時、耳元で「…欲しい」と甘美な悪魔の声で囁かれ、情けなくも自分は陥落してしまった。
付き合いは相当長いが、そんな風にカールが誘ってくることなど、数えるぐらいしかないし、駆け引きの言葉を楽しむ時間もないまま、一撃で落とされたことなど、殆ど記憶にない。
相手の熱を感じながら、ストレートな好意の言葉をあんなにも多く与えられて。
ソロモンは満ち足りたように目を細めながら、
「なんだか、怖いですね」
こんなに幸せを感じたのは、あまりに久しぶりすぎて。
ソロモンはそうカールに耳元で呟いた。
「…考えすぎだ」
今は何も考えるなとカールは言った。
「まだ、いけるか?」
カールが上半身をソロモンの胸の辺りにのせて、誘うように訊く。
「…頑張ります」
ソロモンはそう言って、カールの背中に手をまわした。
数十分後。
「……こんな顔、するんだな」
身支度を整え、ベッドを見下ろしながら、カールは思わず声にだして言った。目の前では、ソロモンが幸せそうに眠っている。
このところ、殆ど眠ることなどなかったから、寝顔を見るのも久しぶりだったし、見る者が思わず微笑んでしまうような、こんな幸せそうな顔はずっと見ていなかった。
(…お前は、ここに残ればいい。…私がいなくても、お前なら大丈夫だろう?)
起こしてしまおうか、と思う。そして、言うのだ。
誰も来ない、お前だけが知っている場所に私を閉じ込めてくれないか、と。
目の前の存在が愛しくて仕方がないことは確かなのに、戦いの感触、高揚感を覚えた体は、それを求めてあれ狂うから。
―――お前がいるというだけで、世界に満足できればよかったのに
例えそうであっても、自分が彼をどう思っていたかなんて、言葉をつくしても、正確に言い表すことなんて、永遠に無理だったかもしれない。
それでも、同じ時間の中で、もっと一緒にいたかった。
「またどこかで、会えるといいな……」
誰にも見せたことのない、悲しげな微笑を浮かべて、カールは身を翻した。一筋の涙が頬を伝う。
それを無理やり拭い、瞳を閉じ、ファントムの仮面をゆっくりとつける。再び開いた瞳が、赤く、戦いの歓喜を求めて輝いた。
「待っていろ小夜……っ!」
カールは一人、闇へと消えていった。
END
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2006/6/23
「狂おしいまでに」放送前に、嫌な予感がしながら書いたの物です。
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今はただ、お前のことを……。
Thanatos
光量を落としたテーブルライトが、かろうじて部屋を暗闇から護っていた。仕事をしようと思って机に出したパソコンが、結局電源を入れられることなく開けっ放しになっている。
ソロモンはぼんやりとベッドの上からパソコンを見ていた。シャツのボタンは全て外れ、腰の辺りまでは毛布がかけてある。朝にやれば仕事は十分間に合うだろうと、頭の片隅で考えながら、ソロモンは見事に仕事の計画を突き崩してくれた犯人――隣で横になっているカール――の黒髪に手をやった。
カールは肩をむき出しにしたまま、こちらを向いて、静かに目を閉じている。
『…やられましたよ』
頭の中に話しかけると、カールは瞳をうっすらと開いて、してやったりという感じで、悪戯っぽい笑みを浮かべた。ソロモンは苦笑しながら、カールの額にキスを落とす。
この日は本当に久しぶりに、何も考えずに、ただ本能の赴くまま求め合えた。…最近はいつも、頭の片隅に何か気がかりなことがあって、カールを抱く時ですらそんな状態だったのだ。
「…今日は、どうしたんですか?」
訊くと、カールはソロモンがどきりとするような、ふわりとした笑顔で、
「たまには…な…」
と答えた。
いつもはこちらが彼の体に手をまわしたりすれば、その手をはねのけたり、煙たがったりするくせに、この日はずっとカールはこんな調子だった。
自分が仕事を始めようとした時、耳元で「…欲しい」と甘美な悪魔の声で囁かれ、情けなくも自分は陥落してしまった。
付き合いは相当長いが、そんな風にカールが誘ってくることなど、数えるぐらいしかないし、駆け引きの言葉を楽しむ時間もないまま、一撃で落とされたことなど、殆ど記憶にない。
相手の熱を感じながら、ストレートな好意の言葉をあんなにも多く与えられて。
ソロモンは満ち足りたように目を細めながら、
「なんだか、怖いですね」
こんなに幸せを感じたのは、あまりに久しぶりすぎて。
ソロモンはそうカールに耳元で呟いた。
「…考えすぎだ」
今は何も考えるなとカールは言った。
「まだ、いけるか?」
カールが上半身をソロモンの胸の辺りにのせて、誘うように訊く。
「…頑張ります」
ソロモンはそう言って、カールの背中に手をまわした。
数十分後。
「……こんな顔、するんだな」
身支度を整え、ベッドを見下ろしながら、カールは思わず声にだして言った。目の前では、ソロモンが幸せそうに眠っている。
このところ、殆ど眠ることなどなかったから、寝顔を見るのも久しぶりだったし、見る者が思わず微笑んでしまうような、こんな幸せそうな顔はずっと見ていなかった。
(…お前は、ここに残ればいい。…私がいなくても、お前なら大丈夫だろう?)
起こしてしまおうか、と思う。そして、言うのだ。
誰も来ない、お前だけが知っている場所に私を閉じ込めてくれないか、と。
目の前の存在が愛しくて仕方がないことは確かなのに、戦いの感触、高揚感を覚えた体は、それを求めてあれ狂うから。
―――お前がいるというだけで、世界に満足できればよかったのに
例えそうであっても、自分が彼をどう思っていたかなんて、言葉をつくしても、正確に言い表すことなんて、永遠に無理だったかもしれない。
それでも、同じ時間の中で、もっと一緒にいたかった。
「またどこかで、会えるといいな……」
誰にも見せたことのない、悲しげな微笑を浮かべて、カールは身を翻した。一筋の涙が頬を伝う。
それを無理やり拭い、瞳を閉じ、ファントムの仮面をゆっくりとつける。再び開いた瞳が、赤く、戦いの歓喜を求めて輝いた。
「待っていろ小夜……っ!」
カールは一人、闇へと消えていった。
END
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2006/6/23
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