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~読む前に~
ルルゥとファントムは話したら気が合いそうだな…と思って書いた作品です。
二人とも本編で全然関わってないじゃん!!!というツッコミは無しでお願いします。
<甘いあまいブドウ>
カルマンは顔面蒼白で歩き回っていた。
そこは窓から入る月明かりだけが照らす古倉庫で、カルマンはその端まで歩いて、また逆方向へと歩いていく。使われなくなってから大分経つたつその倉庫の床では、カルマンが歩くたびに足元で白い埃が舞い上がっていた。
そんなカルマンを、木箱の上に座って外を見ているモーゼスを除く仲間達(特にイレーヌ)が白けきった目で見ていた。
イレーヌは溜め息をついてから、
「いつまでそうしているの?」
と、冷たく言った。
「お前達こそ、どうしてそんな風にしていられるんだ!?」
イレーヌの言葉に、爆発したように叫ぶカルマン。
「別に私達が悪いわけじゃないし」
「なっ…!心配じゃないのか!?あいつのことが!」
「…そのうち帰ってくるでしょ?」
「だがルルゥがいなくなってから何時間たった!?」
「あの子にだって自由はあるわよ…あなたがいない所にいる自由が」
「…っ…!」
カルマンはわなわなと手を震わせて、ショックを受けたように、
「やはり、そうなのか…?」
搾り出すように言った。
「俺が…『チビ助』って言ったから…奴は出て行ったのか…!?」
カルマンの顔から血の気が引いていく。
「…でしょうね。まぁ、あの子も馬鹿じゃないわ。気が済んだら戻ってくるでしょ」
「だが、こんなに長く一人で出歩いて…!」
「カルマン」
まくしたてようとするカルマンの大声に、モーゼスの淡々とした声が割り込んだ。
「日が昇るまでまだ相当時間はある…あまり騒ぎ立てると却ってルルゥが気の毒だ」
「そうそう。過保護すぎるのよ。カルマンは」
「かほ…ご…?」
「そ。少しは放っておいてあげなさいって」
* * *
ある葡萄園の一画で、ルルゥは鼻歌を歌いながら、獲物を物色していた。黒のフードを被り、右手には籠を持っている。頭上には大量にぶら下がる葡萄。広々として静まり返った葡萄園の中で、ルルゥは時折、地面に転がったり、木に触れたり、楽しそうに時々ステップらしきものを踏んだりしながら、歩いていた。
葡萄にはすっぱい葡萄と甘い葡萄があるが、見分け方のことはよくわからない、とモーゼスに聞いたことがあり、実際今でも全く見分けがつかないのだが、それでもすっぱい葡萄は食べたくないので、ルルゥは自分の直感ですっぱくないものを選ぼうと努力していた。
そうやって歩いているうちに、葡萄園の端まで行って、自分を呼んでいる(ような気がする)葡萄を見つけた。
(あれにしよ!)
ルルゥは跳躍して葡萄をもぎ取ると、小道にでて、そこに座り込んだ。
空を見上げると、三日月が空を照らしている。
ルルゥは目を輝かせながら、手にした葡萄を見た。
月明かりに照らされて、艶やかな色を放つそれを、感慨深げに自分の目の前まで持ち上げて、
(いっただきまーす)
食べようとした時、急に目の前が暗くなった。
(え?)
恐る恐る見上げると、
「これはこれは…。可愛いお嬢さんがこんなところでどうしたのかな?」
目の前には、燕尾服にマントを羽織り、怪しげな仮面をつけた黒髪の男が立っていた。
「ひっ……」
小さく悲鳴をあげて、ぼと、とルルゥは持っていた葡萄を落とす。
見た目のせいで幼く見られるが、彼女は兵器として作られた存在であり、戦闘経験は豊富で、それなりに修羅場も潜り抜けてきた。それでも、目の前にいる男から感じる恐怖を止めることが出来なかった。
命の危険というよりは、何か、人生で決してお近づきになってはいけないタイプのオーラを感じたのだ。
「このような夜更けに、君のような小さなレディがいるとは…」
陶酔したように話し続ける男を前に、ルルゥはつい数日前のモーゼスとの会話を思い出していた。
『ルルゥ、見てくれ。面白い言葉を見つけたんだ』
『面白い言葉?どれ?』
『これさ』
『えっと…なんて読むの?』
『ナルシスト』
『なるしすと?』
『自分に酔っている人間を指すらしい』
『自分に酔うって?』
『よくわからないが…、一度見てみたいな』
『うん、見てみたい!!』
(見ないほうがよかった…!)
目の前にいる男が、明らかに「自分に酔っている」と本能で感じ、「見たい」等と思ったことを全力で後悔したが、逃げようにも、ルルゥは立ち上がることさえできなかった。
「本来なら攫ってもいいところだが…今宵はもう私は食事済みでね…」
(よくわからないけどなんか怖いぃぃぃぃぃぃっ!)
「どうした…?そんなに私が怖いのかな?」
近づいてくる男に、ルルゥはきつく目を閉じた。
しかし、何も起こらず、恐る恐る目を開けてみると、
(…え…?)
目の前に葡萄があった。
「食べるがいい」
「…へ…?」
無意識に手をだしたルルゥに、男が葡萄を手渡す。
「君が食べようとしていた葡萄はまだ熟していなかった。これなら食べられる」
ルルゥは数回またたきをした。
「…これ、甘いの?」
「食べればわかるだろう」
葡萄を手の中で回しながら、ルルゥは訝しげにそれを眺めていたが、
そのうち、
「…もらっとく」
そう言って、ルルゥはぶどうにかぶりついた。葡萄を一つずつ取り外すことも無く、皮をとることもなく。そして口の中を皮付きの果肉でいっぱいにして、幸せそうに頬張り始める。
男は何房か葡萄をとって籠にいれてやると、珍しい動物でも見るような目つきをしながら、ルルゥの前にしゃがんだ。
「甘~い☆」
口の周りが汚れることには全く構わず、ルルゥは残りの葡萄にかぶりつく。
男はルルゥの顎に手を添えて、くいっと上に上げる。
ルルゥはされるがままだったが、ブドウを食べる口の動きは全く変わらなかった。男はルルゥの口の周りをハンカチで拭いてから、しばらくルルゥの様子を観察して、彼女の頭の上に手を軽く乗せた。
「…興味深い」
「キョーミブカイ?」
「面白いということだ」
「あんたも面白いよー!」
無邪気に笑いながら、ルルゥは男の黒髪を無遠慮に掴む。
「すごい真っ直ぐ…、こんな髪、あたい見たことない」
「君の髪の方が珍しい」
「そーなの?」
「紫色の髪など始めて見た」
ルルゥのフードをとってしまってから、男は紫色の頭を撫でた。
(なんか変な感じがする……なんだろう……)
なんだか、ふわふわする。そう思いながらルルゥは、葡萄を飲み込む。
「さて、お嬢さん。私はそろそろ行かなければならない」
頭から手が離れていく。そこに何か寂しさを感じながら、ルルゥは男を見た。
「小さなレディ。お手を」
言 われるままにルルゥが手をだすと、男は跪いて、ルルゥの手に口付けた。
「え…っ?」
戸惑うルルゥの前で、男が立ち上がった。
「また会えることを…、いや、君のためには、会わないことを望んだ方がいいのかな…?」
ルルゥが呼び止めようとした時、男の姿は既にそこにはなかった。
代わりに青い薔薇一本、残されていた。
* * *
「ルルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!ああ、ルルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ」
いつもの冷静さはどこへやら、完全にパニック状態になっているモーゼスを、イレーヌ達は無表情で見ていた。
「お、落ち着けモーゼス」
自分より遥かに混乱している人間がいると却って冷静になれるのか、
カルマンはモーゼスのパニックぶりに引きつつ宥めていた。
「落ち着いていられるか!!あまりに遅すぎる!!もしこれで…ルルゥが帰ってこなかったら…帰ってこなかったら…!!僕のせいだ…!」
「お前のせいじゃない!もともとは俺の…!」
「僕も見ていて止めなかった…!ルルゥのケアもしてやらなかった!こうしている間に変な男にでも餌付けされていたら…っ!」
正解が一部含まれている。
「なっ…!縁起でもないこと言うな…!ルルゥになにかあったら…全部俺のせいだ…っ」
「いや、カルマン、全ては僕のっ…!」
責任の背負い合戦を始めた男二人を尻目に、残り数人はひそひそと話を始めた。
「言わなくてもいいのか?本当のこと」
「葡萄とりに行っただけで、別にカルマンにキレたわけじゃないって」
「別にいいんじゃない?二人にはいい薬になるわよ。いい加減ルルゥに過保護すぎるんだから。それに、ルルゥが「ちび助」って言われて怒ってたのは本当よ」
「ルルゥ、俺たちの分の葡萄取ってきてくれるかなぁ…」
「頼むの忘れたから…たぶん自分だけで食べてくるでしょうね」
「ま、奴も息抜きは必要だよな」
「ああ見えて色々背負っちゃう子だし」
「しかし、帰ってきたらどうする?あの二人が暴走しそうだが…」
「その時に考えましょ。計画たてても無駄な気がするから」
『ルルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!』
過保護男二人の大絶叫が、闇夜にこだました。
END
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ルルゥとファントムは話したら気が合いそうだな…と思って書いた作品です。
二人とも本編で全然関わってないじゃん!!!というツッコミは無しでお願いします。
<甘いあまいブドウ>
カルマンは顔面蒼白で歩き回っていた。
そこは窓から入る月明かりだけが照らす古倉庫で、カルマンはその端まで歩いて、また逆方向へと歩いていく。使われなくなってから大分経つたつその倉庫の床では、カルマンが歩くたびに足元で白い埃が舞い上がっていた。
そんなカルマンを、木箱の上に座って外を見ているモーゼスを除く仲間達(特にイレーヌ)が白けきった目で見ていた。
イレーヌは溜め息をついてから、
「いつまでそうしているの?」
と、冷たく言った。
「お前達こそ、どうしてそんな風にしていられるんだ!?」
イレーヌの言葉に、爆発したように叫ぶカルマン。
「別に私達が悪いわけじゃないし」
「なっ…!心配じゃないのか!?あいつのことが!」
「…そのうち帰ってくるでしょ?」
「だがルルゥがいなくなってから何時間たった!?」
「あの子にだって自由はあるわよ…あなたがいない所にいる自由が」
「…っ…!」
カルマンはわなわなと手を震わせて、ショックを受けたように、
「やはり、そうなのか…?」
搾り出すように言った。
「俺が…『チビ助』って言ったから…奴は出て行ったのか…!?」
カルマンの顔から血の気が引いていく。
「…でしょうね。まぁ、あの子も馬鹿じゃないわ。気が済んだら戻ってくるでしょ」
「だが、こんなに長く一人で出歩いて…!」
「カルマン」
まくしたてようとするカルマンの大声に、モーゼスの淡々とした声が割り込んだ。
「日が昇るまでまだ相当時間はある…あまり騒ぎ立てると却ってルルゥが気の毒だ」
「そうそう。過保護すぎるのよ。カルマンは」
「かほ…ご…?」
「そ。少しは放っておいてあげなさいって」
* * *
ある葡萄園の一画で、ルルゥは鼻歌を歌いながら、獲物を物色していた。黒のフードを被り、右手には籠を持っている。頭上には大量にぶら下がる葡萄。広々として静まり返った葡萄園の中で、ルルゥは時折、地面に転がったり、木に触れたり、楽しそうに時々ステップらしきものを踏んだりしながら、歩いていた。
葡萄にはすっぱい葡萄と甘い葡萄があるが、見分け方のことはよくわからない、とモーゼスに聞いたことがあり、実際今でも全く見分けがつかないのだが、それでもすっぱい葡萄は食べたくないので、ルルゥは自分の直感ですっぱくないものを選ぼうと努力していた。
そうやって歩いているうちに、葡萄園の端まで行って、自分を呼んでいる(ような気がする)葡萄を見つけた。
(あれにしよ!)
ルルゥは跳躍して葡萄をもぎ取ると、小道にでて、そこに座り込んだ。
空を見上げると、三日月が空を照らしている。
ルルゥは目を輝かせながら、手にした葡萄を見た。
月明かりに照らされて、艶やかな色を放つそれを、感慨深げに自分の目の前まで持ち上げて、
(いっただきまーす)
食べようとした時、急に目の前が暗くなった。
(え?)
恐る恐る見上げると、
「これはこれは…。可愛いお嬢さんがこんなところでどうしたのかな?」
目の前には、燕尾服にマントを羽織り、怪しげな仮面をつけた黒髪の男が立っていた。
「ひっ……」
小さく悲鳴をあげて、ぼと、とルルゥは持っていた葡萄を落とす。
見た目のせいで幼く見られるが、彼女は兵器として作られた存在であり、戦闘経験は豊富で、それなりに修羅場も潜り抜けてきた。それでも、目の前にいる男から感じる恐怖を止めることが出来なかった。
命の危険というよりは、何か、人生で決してお近づきになってはいけないタイプのオーラを感じたのだ。
「このような夜更けに、君のような小さなレディがいるとは…」
陶酔したように話し続ける男を前に、ルルゥはつい数日前のモーゼスとの会話を思い出していた。
『ルルゥ、見てくれ。面白い言葉を見つけたんだ』
『面白い言葉?どれ?』
『これさ』
『えっと…なんて読むの?』
『ナルシスト』
『なるしすと?』
『自分に酔っている人間を指すらしい』
『自分に酔うって?』
『よくわからないが…、一度見てみたいな』
『うん、見てみたい!!』
(見ないほうがよかった…!)
目の前にいる男が、明らかに「自分に酔っている」と本能で感じ、「見たい」等と思ったことを全力で後悔したが、逃げようにも、ルルゥは立ち上がることさえできなかった。
「本来なら攫ってもいいところだが…今宵はもう私は食事済みでね…」
(よくわからないけどなんか怖いぃぃぃぃぃぃっ!)
「どうした…?そんなに私が怖いのかな?」
近づいてくる男に、ルルゥはきつく目を閉じた。
しかし、何も起こらず、恐る恐る目を開けてみると、
(…え…?)
目の前に葡萄があった。
「食べるがいい」
「…へ…?」
無意識に手をだしたルルゥに、男が葡萄を手渡す。
「君が食べようとしていた葡萄はまだ熟していなかった。これなら食べられる」
ルルゥは数回またたきをした。
「…これ、甘いの?」
「食べればわかるだろう」
葡萄を手の中で回しながら、ルルゥは訝しげにそれを眺めていたが、
そのうち、
「…もらっとく」
そう言って、ルルゥはぶどうにかぶりついた。葡萄を一つずつ取り外すことも無く、皮をとることもなく。そして口の中を皮付きの果肉でいっぱいにして、幸せそうに頬張り始める。
男は何房か葡萄をとって籠にいれてやると、珍しい動物でも見るような目つきをしながら、ルルゥの前にしゃがんだ。
「甘~い☆」
口の周りが汚れることには全く構わず、ルルゥは残りの葡萄にかぶりつく。
男はルルゥの顎に手を添えて、くいっと上に上げる。
ルルゥはされるがままだったが、ブドウを食べる口の動きは全く変わらなかった。男はルルゥの口の周りをハンカチで拭いてから、しばらくルルゥの様子を観察して、彼女の頭の上に手を軽く乗せた。
「…興味深い」
「キョーミブカイ?」
「面白いということだ」
「あんたも面白いよー!」
無邪気に笑いながら、ルルゥは男の黒髪を無遠慮に掴む。
「すごい真っ直ぐ…、こんな髪、あたい見たことない」
「君の髪の方が珍しい」
「そーなの?」
「紫色の髪など始めて見た」
ルルゥのフードをとってしまってから、男は紫色の頭を撫でた。
(なんか変な感じがする……なんだろう……)
なんだか、ふわふわする。そう思いながらルルゥは、葡萄を飲み込む。
「さて、お嬢さん。私はそろそろ行かなければならない」
頭から手が離れていく。そこに何か寂しさを感じながら、ルルゥは男を見た。
「小さなレディ。お手を」
言 われるままにルルゥが手をだすと、男は跪いて、ルルゥの手に口付けた。
「え…っ?」
戸惑うルルゥの前で、男が立ち上がった。
「また会えることを…、いや、君のためには、会わないことを望んだ方がいいのかな…?」
ルルゥが呼び止めようとした時、男の姿は既にそこにはなかった。
代わりに青い薔薇一本、残されていた。
* * *
「ルルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!ああ、ルルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ」
いつもの冷静さはどこへやら、完全にパニック状態になっているモーゼスを、イレーヌ達は無表情で見ていた。
「お、落ち着けモーゼス」
自分より遥かに混乱している人間がいると却って冷静になれるのか、
カルマンはモーゼスのパニックぶりに引きつつ宥めていた。
「落ち着いていられるか!!あまりに遅すぎる!!もしこれで…ルルゥが帰ってこなかったら…帰ってこなかったら…!!僕のせいだ…!」
「お前のせいじゃない!もともとは俺の…!」
「僕も見ていて止めなかった…!ルルゥのケアもしてやらなかった!こうしている間に変な男にでも餌付けされていたら…っ!」
正解が一部含まれている。
「なっ…!縁起でもないこと言うな…!ルルゥになにかあったら…全部俺のせいだ…っ」
「いや、カルマン、全ては僕のっ…!」
責任の背負い合戦を始めた男二人を尻目に、残り数人はひそひそと話を始めた。
「言わなくてもいいのか?本当のこと」
「葡萄とりに行っただけで、別にカルマンにキレたわけじゃないって」
「別にいいんじゃない?二人にはいい薬になるわよ。いい加減ルルゥに過保護すぎるんだから。それに、ルルゥが「ちび助」って言われて怒ってたのは本当よ」
「ルルゥ、俺たちの分の葡萄取ってきてくれるかなぁ…」
「頼むの忘れたから…たぶん自分だけで食べてくるでしょうね」
「ま、奴も息抜きは必要だよな」
「ああ見えて色々背負っちゃう子だし」
「しかし、帰ってきたらどうする?あの二人が暴走しそうだが…」
「その時に考えましょ。計画たてても無駄な気がするから」
『ルルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!』
過保護男二人の大絶叫が、闇夜にこだました。
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