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29話の直後予想のソロカル。
「2番目ですか?」とは別バージョンです(笑)
最初の部分は一部引用していますが。
前編は上機嫌カール。後編はしんみり小夜のことを二人です。
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その時が来るまで・前編
パリが、赤く染まる。
窓から入る夕日に照らされた二人も、その例外ではない。
「元気そうじゃないですか」
と、カールの右手を掴みながら、ソロモンは余裕の笑みを浮かべた。
―――好きですよ、こういう激しい挨拶。
カールはくくっ、と喉の奥で笑ってから、
「ああ、最高の気分だ…再会の握手を…してもらえるかな??」
翼手化した手を変化させながら、それを見せ付けるように、ソロモンの前にかざす。思わずソロモンは息を呑んで、驚愕の言葉を口にした。
「…ふっ…」
ソロモンのその声を聞いて、カールは笑みを更に深くした。
自分の腕、脚。取り戻せただけでも、嬉しいことこの上ない上に、ソロモンの驚いた顔が可笑しくてしょうがないらしい。
上機嫌のまま、ソロモンの反応を楽しむ。
「………」
しかし、黙り込んで深刻そうな顔をし始めたソロモンに、
「…なんだ?」
カールは明らかに気分を害したように訊いた。
ソロモンは、いえ、なんでもありません。と、すぐに表情を戻して、
「椅子を代えないといけませんね…。誰かさんが再起不能にしてくださったので」
と、カールの爪の犠牲になったソファを見た。
見事に三本の線がざっくりと描かれ、中身が見えてしまっている。
「避ける方が悪い」
カールはソロモンに背を向けて、椅子の方へ向かった。
「……それと、棚と壁も」
カールの被害にあったそれぞれに、ソロモンは目配せした。
「最新のデザインだとでも言っておけばいい。…幸い、そういう現代芸術がある」
ソロモンの苦情をかわしながら、先程自分が傷つけた椅子に、カールは偉そうに脚を組んで座った。一度は失くした脚がそこにあることを、見せ付けるように。少し椅子を引いて、近づいてきたソロモンをこれまた偉そうに見上げる。
ソロモンはカールのすぐ傍で、机に軽く腰掛けた。
「本当に、元気そうでなによりです」
「お前もいつも通りでなによりだ」
「…どのあたりがいつも通りなんでしょう」
カールは両腕をあげて、
「同じ部屋にいるだけで嫌になってくるあたりだ」
尊大に、言った。
「お褒めに預かり光栄です」
ソロモンは心から、恭しく頭を下げた。
ゆっくりと頭を上げて、カールを見つめたまま、後手に電話を探して、秘書につなぐ。
誰の連絡であっても電話をつなぐな、という旨を短く告げた。
「…さて…」
電話を切って、ソロモンは目元に笑みを浮かべながら、
「どうしましょうか…C・E・O?」
CEOであるソロモンの椅子に我が物顔で座るカールに、『CEO』をことさら強調して、ソロモンは言った。
「そうだな…」
カールは顎に手をやって、椅子を軽く横に数回揺らしながら、しばらく考える。
「私を満足させてもらおうか」
ソロモンは妖しい光を目元に宿らせながらも、
「嫌ですねぇ、職権乱用する上司って…いつか訴えますよ?」
口元に嬉しそうに笑みを浮かべて、声だけは呆れたように言った。
「…やってみろ。徹底抗戦してやる」
「いつから我が社のCEOはこんな風になったんですか?」
「さあな。私の前の奴が史上最悪だったことだけは知っている」
「そうですか?…でも」
ソロモンはカールの顔を手で包んで、
「前のCEOじゃないと、あなたは満足できないでしょう?」
自信たっぷりな瞳で言った。
「…どうかな?」
「…試してみましょうか」
ソロモンは、挑戦的な目で見上げてくるカールの黒髪を撫でた。
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2006/06/08
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