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ソロカルSS。
ラブラブを目指したら…?
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水を得たサカナ
心の周りの氷が、なんの予兆もなく、とける時がある。
<水を得たサカナ>
東南アジアの某国。
夜の熱帯雨林を、カールが颯爽と風のように駆けていく。その後ろを、ソロモンが一定の距離を保ちながら追っていた。
湿気に支配されているその場所では、足を地面におろすたびに、粘性のある土からびちゃとびちゃと音がするのだが、カールの足どりは実に軽い。
ここ数年ずっとヨーロッパ圏にいたせいなのか、
数日前からソロモンとアジア圏にあるこの国に来てからというもの、カールは実に嬉しそうだった。欧州某国を出立する時は「なぜお前となんだ」とぶつくさとソロモンに文句を言っていたくせに、今ではソロモンの顔を見て微笑みだす始末だ。
最初は、通常では考えられないその様子に思わずひいたりしてしまったが、その喜びようがだんだん微笑ましく思えてきて、ソロモンは、カールが夜にこっそりと、行く先も告げずに無断外出しているのを見て見ぬフリをしていた。(カールは隠し通せていると思っていたようだが)
そして、この日の夕方。
「見せたい場所があるからついてこい」とカールに誘われた。
仕事のこともあり、断るのが得策だったのだが、カールの実に楽しげな顔を見て、思わず「是非」とソロモンは答えてしまったのだ。
そして今に至る。
明らかに人の手が全く入っていない熱帯雨林は、月明かりの入らない場所では漆黒が支配し、その深遠から危険生物がいつ現れてもおかしくない様子だった。(相手が翼手では歯が立たないだろうが)
カールは後ろにソロモンがいることを忘れているのではないかと思わせるほど、全力で、後ろを全く振り返らずに駆けていく。
そうやって、言葉を交わすこともなく駆けていって―――、
突然ソロモンの視界全体に淡い月光が入った。
熱帯雨林はそこで終わり、その先には、真っ白な砂浜が広がっていた。
更に先には、夜色の海。
やはり全く人の手が入っていないそこには、見ようによっては不気味に見える、黒いごつごつした人間の背より巨大な岩が、海にも砂浜にもところどころにそそり立っていた。
カールはそのうちの一つの上にいて、ソロモンを手招きしている。
ソロモンがその岩に向かって跳躍したのを確認して、カールは海に向かってだんだんと低くなっていく岩に次々と飛び移っていく。
一番沖の方にある岩にたどり着くと、そこでカールは立ち止まって、
海を覗き込むようにして座りこむ。その岩は、海面から10cmほどだけ顔を出している平らな岩で、人間が一人横になれるぐらいの大きさ。
そこから海を見れば、そこはすでに人間の身長数人分ぐらいの深さになっていた。カールが着いてから数秒後、ソロモンもその岩に着いて、砂浜の方を振り返る。
おそらく、巨大な熱帯雨林によって人の手から守られたと思われるそこには、自然の漂着物が大量に打ち上げられていた。その向こうには、無秩序に立つ岩逹。そして、先ほど駆け抜けてきた熱帯雨林。
秩序という言葉からかけ離れたその光景を見て、
ソロモンは、なぜカールがここに連れて来たがっていたのか、わかった気がした。
「カール…ここは本当に美しいですね」
「人の手が全く入っていないからな…あるのは自然の意志だけだ」
混沌ゆえの美しさ。
海の水は透明そのもので、いくら底が深くなっても視力が続く限りは、
いくらでも底が見えそうだった。
カールは海水に手を浸してから、指先についたそれを舐めている。
産業革命以降、産業排水に犯され続けた海しか見たことのないソロモンにとって、それは新鮮すぎる光景だった。
湖で泳いだことはあるが、海で泳いだことはない。
ソロモンは、海と同様に澄みきった夜空を見上げた。宝石箱の中身を全て撒いたような、きらきらと光る空。
水平線ギリギリまで見える星達を、ソロモンはじっと見ていた。
次は首が痛くなるほど、真上の星達を見上げる。
その時。
ぼちゃん、と大きな水音がした。
ソロモンが足元を見ると、先ほどまでそこでしゃがんでいたカールがいなくなっていた。靴だけがそこに残されている。
「カール?」
ソロモンがそう言ったのとの同時に、カールは海面から顔をだした。
そして、すぐに潜っていく。
アオザイを着たまま、サカナの様に優雅に泳いでいくカールを、ソロモンはしゃがんで覗き込む。
カールはだいぶ深いところまで潜ってから、上昇。
カールは海面から顔をだして、目の前に垂れた髪を耳の後ろにやると、
ソロモンに向かって満足そうに笑った。
いつもなら考えられないようなその無邪気な笑みに、ソロモンは驚きつつも、
「本当にここが好きなんですね」
と、微笑んで言った。
「ここの海ならいくらでも泳げる…お前もどうだ?」
「僕は遠慮しておきます」
そうか、とカールは意外にもすんなり言うと、また海の底の方に戻っていった。
ソロモンのいる岩からだいぶ離れた海面から顔をだすカールを何度か見てから、その場から砂浜の観察を始めた。
そうやって、油断したのがまずかった。
ソロモンは、岩にゆっくりと近づくカールの影に気づいていなかった。
カールは海の中で岩に沿って、慎重にソロモンの真下まで行く。
ソロモンは砂浜の岩の形を丹念に観察していたところだった。
真下の海面から二本の腕が伸びて、その腕がソロモンの肩を抱いて――、何が起こったのかソロモンが理解した時、すでにソロモンは海の中。慌てて顔海面から顔をだすと、隣でカールがしてやったりという顔をしていた。
「やりましたね」
「たまにはいいだろう?」
悪びれずに言うカールに、
「まぁたしかに……」
ソロモンは楽しげにそう途中まで言って、カールに飛び掛った。
「!?」
カールはそれを避けられず、派手な音を立てて、二人とも海に深く沈み込む。海面の下で、ソロモンはカールの唇に熱烈に口付けた。
カールが逃げないようにときつく抱きしめたのだが、カールはソロモンの予想に反して、ソロモンを強く抱き返し、キスに積極的に応えた。
月明かりが届く海の中で、舌を絡めながら、深く口づけあう。
息継ぎのために、一度互いに離れて海面にでると、言葉を交わす間も無く、今度はカールがソロモンに襲い掛かった。
息継ぎをして、相手に飛び掛かり、また息継ぎをして相手に飛び掛る、
という行為を何度も何度も繰り返す。
また二人で海面に顔をだした時、ソロモンはカールを見て吹き出した。
「カール」
カールの髪を結っていた留め具がはずれ、長い黒髪が顔全体を覆っている。
「黒髪お化けになってますよ」
ソロモンはそう言って、顔にかかったカールの髪を、耳のほうにずらしてやる。するとそこには、子どものように笑うカールの顔があった。
思わず微笑み返すと、カールは先に海に潜っていた。
海底のほうで待っていたカールに追いつくと、ソロモンはカールの腕を引き寄せた。そして、月光照らされて光る無数の気泡に囲まれながら、長く長く口づけあう。
息継ぎに海面にでて、ソロモンがカールに飛び掛ろうとした時、そこにカールはいなかった。
岩の方を振り向けば、カールは先に岩に上がって、脚だけ海に浸して座っていた。
ソロモンはカールの横のあたりに上がって、岩に腰掛けていたカールの背中を気遣いながら優しく押し倒して、口づける。
ゆっくり顔を離すと、カールの指先がソロモンの頬にふれた。
「ずぶ濡れだな」
「カールのせいですよ」
そうだな、と言ってカールは笑う。
「責任をとってやろうか」
「……僕より先に言わないでください」
ソロモンがふくれると、カールは、あはははっ!と声をあげて笑った。
その口を塞ぐようにして、ソロモンはカールに覆いかぶさって、また口づける。その背中を、カールが抱きしめて――、
そのあと二人がどうなったかは、近くを偶然通りかかったサカナだけが知っている。
ただ、朝日で海が金色に染まる頃、二人がまだそこにいた、ということだけは記しておこう。
END
ウタ●ヒカルの「Passion」を聞いていたらこうなってしまいました(笑)
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web拍手ログ。
ラブラブを目指したら…?
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水を得たサカナ
心の周りの氷が、なんの予兆もなく、とける時がある。
<水を得たサカナ>
東南アジアの某国。
夜の熱帯雨林を、カールが颯爽と風のように駆けていく。その後ろを、ソロモンが一定の距離を保ちながら追っていた。
湿気に支配されているその場所では、足を地面におろすたびに、粘性のある土からびちゃとびちゃと音がするのだが、カールの足どりは実に軽い。
ここ数年ずっとヨーロッパ圏にいたせいなのか、
数日前からソロモンとアジア圏にあるこの国に来てからというもの、カールは実に嬉しそうだった。欧州某国を出立する時は「なぜお前となんだ」とぶつくさとソロモンに文句を言っていたくせに、今ではソロモンの顔を見て微笑みだす始末だ。
最初は、通常では考えられないその様子に思わずひいたりしてしまったが、その喜びようがだんだん微笑ましく思えてきて、ソロモンは、カールが夜にこっそりと、行く先も告げずに無断外出しているのを見て見ぬフリをしていた。(カールは隠し通せていると思っていたようだが)
そして、この日の夕方。
「見せたい場所があるからついてこい」とカールに誘われた。
仕事のこともあり、断るのが得策だったのだが、カールの実に楽しげな顔を見て、思わず「是非」とソロモンは答えてしまったのだ。
そして今に至る。
明らかに人の手が全く入っていない熱帯雨林は、月明かりの入らない場所では漆黒が支配し、その深遠から危険生物がいつ現れてもおかしくない様子だった。(相手が翼手では歯が立たないだろうが)
カールは後ろにソロモンがいることを忘れているのではないかと思わせるほど、全力で、後ろを全く振り返らずに駆けていく。
そうやって、言葉を交わすこともなく駆けていって―――、
突然ソロモンの視界全体に淡い月光が入った。
熱帯雨林はそこで終わり、その先には、真っ白な砂浜が広がっていた。
更に先には、夜色の海。
やはり全く人の手が入っていないそこには、見ようによっては不気味に見える、黒いごつごつした人間の背より巨大な岩が、海にも砂浜にもところどころにそそり立っていた。
カールはそのうちの一つの上にいて、ソロモンを手招きしている。
ソロモンがその岩に向かって跳躍したのを確認して、カールは海に向かってだんだんと低くなっていく岩に次々と飛び移っていく。
一番沖の方にある岩にたどり着くと、そこでカールは立ち止まって、
海を覗き込むようにして座りこむ。その岩は、海面から10cmほどだけ顔を出している平らな岩で、人間が一人横になれるぐらいの大きさ。
そこから海を見れば、そこはすでに人間の身長数人分ぐらいの深さになっていた。カールが着いてから数秒後、ソロモンもその岩に着いて、砂浜の方を振り返る。
おそらく、巨大な熱帯雨林によって人の手から守られたと思われるそこには、自然の漂着物が大量に打ち上げられていた。その向こうには、無秩序に立つ岩逹。そして、先ほど駆け抜けてきた熱帯雨林。
秩序という言葉からかけ離れたその光景を見て、
ソロモンは、なぜカールがここに連れて来たがっていたのか、わかった気がした。
「カール…ここは本当に美しいですね」
「人の手が全く入っていないからな…あるのは自然の意志だけだ」
混沌ゆえの美しさ。
海の水は透明そのもので、いくら底が深くなっても視力が続く限りは、
いくらでも底が見えそうだった。
カールは海水に手を浸してから、指先についたそれを舐めている。
産業革命以降、産業排水に犯され続けた海しか見たことのないソロモンにとって、それは新鮮すぎる光景だった。
湖で泳いだことはあるが、海で泳いだことはない。
ソロモンは、海と同様に澄みきった夜空を見上げた。宝石箱の中身を全て撒いたような、きらきらと光る空。
水平線ギリギリまで見える星達を、ソロモンはじっと見ていた。
次は首が痛くなるほど、真上の星達を見上げる。
その時。
ぼちゃん、と大きな水音がした。
ソロモンが足元を見ると、先ほどまでそこでしゃがんでいたカールがいなくなっていた。靴だけがそこに残されている。
「カール?」
ソロモンがそう言ったのとの同時に、カールは海面から顔をだした。
そして、すぐに潜っていく。
アオザイを着たまま、サカナの様に優雅に泳いでいくカールを、ソロモンはしゃがんで覗き込む。
カールはだいぶ深いところまで潜ってから、上昇。
カールは海面から顔をだして、目の前に垂れた髪を耳の後ろにやると、
ソロモンに向かって満足そうに笑った。
いつもなら考えられないようなその無邪気な笑みに、ソロモンは驚きつつも、
「本当にここが好きなんですね」
と、微笑んで言った。
「ここの海ならいくらでも泳げる…お前もどうだ?」
「僕は遠慮しておきます」
そうか、とカールは意外にもすんなり言うと、また海の底の方に戻っていった。
ソロモンのいる岩からだいぶ離れた海面から顔をだすカールを何度か見てから、その場から砂浜の観察を始めた。
そうやって、油断したのがまずかった。
ソロモンは、岩にゆっくりと近づくカールの影に気づいていなかった。
カールは海の中で岩に沿って、慎重にソロモンの真下まで行く。
ソロモンは砂浜の岩の形を丹念に観察していたところだった。
真下の海面から二本の腕が伸びて、その腕がソロモンの肩を抱いて――、何が起こったのかソロモンが理解した時、すでにソロモンは海の中。慌てて顔海面から顔をだすと、隣でカールがしてやったりという顔をしていた。
「やりましたね」
「たまにはいいだろう?」
悪びれずに言うカールに、
「まぁたしかに……」
ソロモンは楽しげにそう途中まで言って、カールに飛び掛った。
「!?」
カールはそれを避けられず、派手な音を立てて、二人とも海に深く沈み込む。海面の下で、ソロモンはカールの唇に熱烈に口付けた。
カールが逃げないようにときつく抱きしめたのだが、カールはソロモンの予想に反して、ソロモンを強く抱き返し、キスに積極的に応えた。
月明かりが届く海の中で、舌を絡めながら、深く口づけあう。
息継ぎのために、一度互いに離れて海面にでると、言葉を交わす間も無く、今度はカールがソロモンに襲い掛かった。
息継ぎをして、相手に飛び掛かり、また息継ぎをして相手に飛び掛る、
という行為を何度も何度も繰り返す。
また二人で海面に顔をだした時、ソロモンはカールを見て吹き出した。
「カール」
カールの髪を結っていた留め具がはずれ、長い黒髪が顔全体を覆っている。
「黒髪お化けになってますよ」
ソロモンはそう言って、顔にかかったカールの髪を、耳のほうにずらしてやる。するとそこには、子どものように笑うカールの顔があった。
思わず微笑み返すと、カールは先に海に潜っていた。
海底のほうで待っていたカールに追いつくと、ソロモンはカールの腕を引き寄せた。そして、月光照らされて光る無数の気泡に囲まれながら、長く長く口づけあう。
息継ぎに海面にでて、ソロモンがカールに飛び掛ろうとした時、そこにカールはいなかった。
岩の方を振り向けば、カールは先に岩に上がって、脚だけ海に浸して座っていた。
ソロモンはカールの横のあたりに上がって、岩に腰掛けていたカールの背中を気遣いながら優しく押し倒して、口づける。
ゆっくり顔を離すと、カールの指先がソロモンの頬にふれた。
「ずぶ濡れだな」
「カールのせいですよ」
そうだな、と言ってカールは笑う。
「責任をとってやろうか」
「……僕より先に言わないでください」
ソロモンがふくれると、カールは、あはははっ!と声をあげて笑った。
その口を塞ぐようにして、ソロモンはカールに覆いかぶさって、また口づける。その背中を、カールが抱きしめて――、
そのあと二人がどうなったかは、近くを偶然通りかかったサカナだけが知っている。
ただ、朝日で海が金色に染まる頃、二人がまだそこにいた、ということだけは記しておこう。
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