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十代後半ぐらいのカール。場所はロシア。
 「その他」にするか「ソロカル」にするか悩んだのですが…。
一応ソロカルに。

グレゴリー VS ソロモン
しかし出番はほとんどグレ兄。
こうして黒ソロは培われたのかと…(笑)

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 実に面白い。そして、実に面白くない。 



銀色の悪魔



 カールは緊張した面持ちで鏡の前で座っていた。少年とも青年ともいえないぐらいの年頃で、今はいつもの民族衣装ではなく、外交官用の礼服を着ている。その後ろでは黒のカソックに身を包んだ銀髪の兄――グレゴリーが手にした櫛を確認している。匠によって数年をかけて作られたそのつげ櫛は、怠りなく手入れされていた。
「さすがですね、カール。手入れが行き届いている」
 丁寧な口調で言うグレゴリーを、その後ろで立っているソロモンが睨みつけていたが、カールはそれに気づかず、グレゴリーは気づきつつも無視して進めた。

 ゆっくりとグレゴリーがカールの髪を梳く。東洋で買い入れられてから愛用され続けているそれは、今日も持ち主の黒い川をさらさらと流れた。
先端が髪に潜って、やがて歯の奥まで飲み込まれていく。
 ほとんど抵抗がゼロと言っていいその黒髪が丹念に、最初は左側から、後頭部、右側へと、反時計まわりに梳かれていく。
 ことり、とグレゴリーは鏡の前に櫛をおいて、濃紺に銀の刺繍が入っているリボンを手に取った。カールの艶やかな黒髪は、ほんの少しでも気を抜けば手から流れ落ちてしまいそうで、グレゴリーは慎重にカールの髪を、うなじのあたりで結った。
「はい、できました!」
 嬉しそうに言うグレゴリーに、カールは軽く頭を下げる。
「ご婦人方も放っておかないでしょう…。役に立ってもらいますからね、カール」
「…………」
 実に楽しげなグレゴリーとは逆に、ソロモンは鋭い視線をグレゴリーに向けていた。
「…どうした?」
 いつもなら微笑みを浮かべているはずのソロモンに、怪訝そうにカールが訊くと、
「あ、…いえ、なにも」
 ソロモンはいつもの微笑みをカールに向けながらも、グレゴリーへの不審を隠そうとはしなかった。
「そうだカール!あなたは先に下に行っていてください。お茶をだすように言ってありますから」
「…この服のままで?」
 グレゴリーが言うと、カールは自分の服を見た。
「ええ、慣れておくのも大事ですよ。慣れない服でいきなり本番では失敗しますよ。私はあとからソロモンと行きますから。ね?ソロモン」
『…そうだろう?ソロモン』
 ソロモンの頭だけに冷たいグレゴリーの声が響いた。
 カールに背を向けてソロモンの方を振り返ったグレゴリーの表情もまた、恐ろしく冷たいもので、ソロモンに選択肢を与えるものではない。
「…ええ。僕たちは日程の調整のことがありますから。カールは先に行っていてください」
 そうか?と言ってカールは部屋をでていった。


「…さて」
 カールの姿が見えなくなったのを確認してから、グレゴリーは椅子に脚を組んで座って、
「…何か言いたいようだな、ソロモン」
 怜悧な微笑を口元に浮かべながら、言った。
「…何故カールを使うのですか。彼はまだ…」
「人間、か?そうだ。だからこそ、容易に人間にとけこめる…それに、言ったはずだ。東洋系の美しい男となれば、宮廷の女どもも放って置かないだろう。実に取り入りやすい。…こちらの言葉が喋れないふりをさせて、より興味をひくこともできる」
「それならば、僕でも良かった筈です、擬態で…」
「ソロモン、そんなにカールと部屋を別にしたのが不服か?」
 グレゴリーは一瞬でソロモンの後ろに移動して言った。
「!」
 急に脈絡のないことを言われ、ソロモンは反応できずにその場で立ちすくんだ。
「カールの部屋が自分から遠く、私の部屋に近いのが、そんなに怖いのか?」
 グレゴリーはソロモンのすぐ後ろから、耳元で、ねっとりとした声で言った。そして、男の嫉妬のなんと恐ろしいことか! と言いながら、部屋の中央で銀髪を靡かせながらくるりと回る。
「あれだけじゃれておきながら、まだカールの肌も知らないと見える」
 勝ち誇ったように言うグレゴリーに、
「それが、なんですか?」
 ソロモンは努めて冷静に(それでも恐ろしい顔には違いないが)返した。
「私ならすぐにでも頂くよ」
 口元を歪ませ、
「……他の誰かに食われる前に」
 グレゴリーはソロモンを見下すように、嘲笑を浮かべた。
「…何が言いたいんですか」
「言葉の通りだよソロモン。それがわからない程お前が愚かではないと、私は心から望みたいが。…長兄殿も、責務を全うする限りは恋愛は自由だとお考えのようだ。…私が誰に手をだそうと怒りを買うことはまずない」
「カールの意志はどうなります?」
「大した自信だなソロモン。今の言葉、カールが自分以外には靡かないという自信に聞こえた」
 グレゴリーは目を細める。
「わからないぞソロモン…。人の心などすぐに移ろう。ましてやカールの選ぶ対象が私とお前では…、わかるだろう?」
「いいえ、わかりかねます」
 きっぱりと言ったソロモンに、グレゴリーはくくっ、と喉の奥で笑った、
「いいだろう…ソロモン。ここが私の館だということを、くれぐれも忘れずに行動するがいい」


 
 グレゴリーは長兄からの仕事をソロモンに押し付けると、自分は数分後、カールとテラスでお茶を飲んでいた。
「カール、本当に感謝している!お前が来てからソロモンが面白くて仕方ない」
 ソロモンの前でカールと話していた時とは違い、グレゴリーは普通の口調で、カールと喋っていた。カールは特に興味なさそうな目をしながら、紅茶の入ったカップを傾けた。
「あの嫉妬の塊のような顔など、滅多に見れたものではない…。あれは見ものだ」
 その言葉に、カールは満更でもないような顔をしながら、自分のカップに紅茶を注いだ。
「相当愛されているようだな、カール」
「…さぁな…」
 カールは曖昧な返事を返した。
「ところで、あの男のどこが良いのか、訊いてなかったな」
「…わからないか?」
 意外そうに言うカールに、グレゴリーは笑いすぎて滲んだ涙を拭きながら、
「幸運なことに、全くわからない。自然に解るようになったら私の人生は終わってもいいと思っている」
 何しろ奴が大嫌いなのでね、と最後に付け加えて言った。
 カールは、カップを置く。
「あなたと違って、愛すべき欠点があるから…とだけ言っておく」
「完全ではないからということか。良くある答えだ。…実に面白みのない。だが、それでいて優れている。私を持ち上げておいて、フるとはな」
 私が完璧なのは直しようがないからな。
 グレゴリーがそう言うと、カールは目元に笑みを浮かべながら、カップに口をつけた。



数十分後。
「……大した奴だカール…しかし…」
 グレゴリーは自室で一人、窓の外を眺めながら、
「あとでたっぷりと楽しませてもらうぞソロモン……」
 拳を憎々しげに握り締めた。


 丁度そのころ、グレゴリーに押し付けられた仕事を片付けたソロモンが、世にも恐ろしい顔でグレゴリーへの復讐を誓っていた。



END



グレ兄の「ロシアン・ローズ」での喋り方と漫画版での喋りを必死に比べました…。

ソロモン、FIGHT!
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2006/06/21
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