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  <updated>2008-02-11T00:37:39+09:00</updated>
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    <published>2010-11-01T01:01:33+09:00</published> 
    <updated>2010-11-01T01:01:33+09:00</updated> 
    <category term="ソロカルＳＳ" label="ソロカルＳＳ" />
    <title>十月の果てへ踊れ　５</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<br />
<br />
<div style="text-align:center"><span style="font-size:220%">＜十月の果てへ踊れ　５＞</span></div><br />
<br />
<br />
<br />
　性格が良いとは、自分でも思えないなぁ、とソロモンはぼんやりと考えた。<br />
　目の前には、横たわる四つの死体。本当なら色々と話をしなければいけない人達なのだろうが、自分はただ、カールの真意が知りたかった。話をしている時間など無駄な時間でしかない。<br />
<br />
「束になってこの程度……。私が戦えたなら、このような体たらくは晒さなかったものを」<br />
　<br />
　グレゴリーが苛々と呟く。<br />
<br />
「あなたがそこまでお強いと言う話を聞いたことはありませんが。SAYAと戦ったときはかなり無様な負け方をしたとか」<br />
<br />
　グレゴリーはソロモンの言葉に牙をむきはしたものの、腕を組んだまま、その場から動かない。<br />
<br />
「残酷にも程があるぞソロモン。全く動じずに斬殺するとは」<br />
「彼らを殺さなければ、カールは出てこない。……そういうことでしたので」<br />
「それでも残忍すぎると思わないか、なぁ、カール？」<br />
<br />
　グレゴリーが言ったとき、後ろに気配を感じてソロモンは振り返る。<br />
　ソロモンから少し離れた所にカールが立っていた。<br />
　<br />
　ああ、カール。<br />
<br />
　叫びだしたい衝動にかられながら、ソロモンは努めて冷静を装う。<br />
<br />
「貴方の望み通り、彼らを殺しました。……僕は、次は何をすればいいのですか？」<br />
「望み？　私の？　勘違いするなソロモン。お前は自分で望んで殺したんだ」<br />
<br />
　カールはゆっくりと手を上げると、その胸の上に置いた。<br />
<br />
「……私の、ことも」<br />
「……それが、この宴が開かれた理由ですか」<br />
<br />
　ソロモンが尋ねると、カールは頷く。<br />
<br />
「我々死者は、本来、生者を殺すことはできない。……死してもなお憎しみが消えない相手以外は。私は、お前を殺す為に今宵、戻ってきた。……この身を人ならざるものへ変え、弄び、そして裏切った貴様を許さない」<br />
<br />
　ソロモンは、カールの言葉に強烈な違和感を覚えた。<br />
　ソロモンの脳裏に、ソロモンの首をすり抜けたグレゴリーの刃が浮かぶ。<br />
　グレゴリーの行動と、カールの言葉は明らかに矛盾していた。<br />
<br />
「何か言ったらどうだ。ソロモン」<br />
<br />
　何も答えないソロモンに苛立つように、カールが捲し立てる。<br />
　それでもカールの言葉の違和感が拭えず、ソロモンが何も答えないでいると、<br />
<br />
「……そうか。お前にとってはこの命、握りつぶしたことも忘れる程のものか！！」<br />
<br />
　カールは腕を刃化させ、ソロモンに斬りかかってきた。<br />
　ソロモンはカールの一撃を刃化させた腕で受け止める。<br />
　<br />
（貴方の命を握りつぶしたことを、忘れる？）<br />
<br />
　そんなこと、あるものか、と毒づく。<br />
　全部覚えている。<br />
　ディーヴァに怯えながら、ソロモンの名を呼んだカールの声を。<br />
<br />
　カールの腕の皮膚を、ソロモンの刃が破り、筋肉を切り裂き、骨を砕いた感触を。<br />
　そして、1917年と同じ、か細い声でソロモンの名が口にされたことを。<br />
<br />
　カールのことを、忘れた日など、なかった。出会ったときから、ずっと。<br />
　カールが人であったときも、人でなくなってからも。<br />
　<br />
“カールは、僕とさえ出会わなければ、人として、光の道を行けたのに”という罪悪感を、ソロモンが抱かない日などなかった。<br />
<br />
　そして、カールの命を終わらせたあとに、気付いた。<br />
<br />
　“あれはカールの苦しみを終わらせるためだった”、とソロモンは自分に嘘をついた。<br />
　本当は、自分が苦しみから逃れたかったからだ。愛していると愛しい人に口にすることもできず、遠巻きに罪悪感で押しつぶされる毎日から。<br />
<br />
　シカシ、カールヲ失ッテ、ヤットワカッタ。<br />
　タトエ、カールノ姿ヲ見ルタビニ胸ヲ抉ラレテイタトシテモ、自分ハ、カールノイナイ世界ヲ生キルコトナド、出来ナクナッテイタノダト。<br />
<br />
　カールは一度後退してから、再びソロモンに向かってきた。<br />
　ソロモンは腕を元の形に戻し、その場に跪く。<br />
　ソロモンの行動に驚いたのか、カールはソロモンの前で立ち止まった。<br />
<br />
「何を、している」<br />
「貴方こそ、何をしているのですか？　早く僕の首を切り落とせばいい。僕が憎いのでしょう？」<br />
「……何を企んでいる」<br />
「いえ、何も」<br />
<br />
　カールは動かない。どうしましたか？　とソロモンが尋ねると、カールは後ずさった。<br />
<br />
「お前は、一体……」<br />
「カール。僕は、ずっと考えていました」<br />
<br />
　ソロモンは、心から不思議に思う。<br />
　何故、1917年に、そうでなければ、4年前に、自分はこうしていなかったのだと。<br />
<br />
「貴方のいない世界を、生きている意味なんてなかった」<br />
<br />
　出会った一瞬で、運命が変わるような恋をした。<br />
　その瞬間に、自分が生きられる世界は、カールのいる世界だけに狭められていた。<br />
　それに気づいたときには、カールはこの世界にいなかった。<br />
　<br />
「だから、この命を貴方が奪いたいというならそれで構わない。貴方を殺すか、自分が殺されるかしか選べないなら、僕は迷わず後者を選ぶ」<br />
<br />
　もう、前者を選んだ世界がどんなものだったか、ソロモンは知っている。<br />
　苦しみから逃れようとして、自分が得たのは、終わることのない拷問のような世界だった。どんなに後悔しようが、どんなに叫ぼうが、カールに会うことのできない、昨日までの時間にはもう、戻りたくない。<br />
<br />
「貴方の望むとおりに、すればいい」<br />
「……お前はそうやって、いつも、私が一番欲しいものを与えてくれない」<br />
<br />
　カールの声は、震えていた。<br />
<br />
「……カール？」<br />
「言えっ！！　私のことなど、最初からゴミくずだと思っていたと！！　騙された私を愚かだと思っていたとっ！！」<br />
「……すみません。貴方の望みでも、それだけは殺されても言えません」<br />
<br />
　錯乱したように叫ぶカールに、ソロモンは悟ったような声音で返す。<br />
　もう、自分の気持ちを偽ることになど、耐えられない。ずっとそうやって苦しんできたのだから。　<br />
<br />
「お前はっ、」<br />
<br />
　カールは倒れ込むようにしながら、ソロモンの黒いスーツの胸元を掴む。<br />
<br />
「お前は、どれだけ私の心を荒らし回れば気が済むんだっ……！！」<br />
<br />
　カールはそのまま、その場に崩れ落ちた。<br />
<br />
「私がっ、お前を殺したいと言っているのが、聞こえないのかっ」<br />
<br />
　掠れた声で、カールが必死に紡ぐ言葉には嗚咽が混じっていた。<br />
<br />
「貴方は嘘をついている。……では、何故、グレゴリーは僕を殺せないのですか？」<br />
<br />
　カールはびくりとしてから、顔を上げる。<br />
<br />
「僕を憎み、恨んでいる者に、僕を殺す資格が与えられるならば、グレゴリーが僕を殺せないのはおかしいんです。おそらく、今日会った人たちの中で、僕のことを一番憎んでいる筈なのに。実は、グレゴリーは僕を憎んでいなかったとか？　違いますね。それはないでしょう。では、何故貴方は嘘をついたのか。……今から言うことは、僕に都合のいい解釈かもしれません」<br />
<br />
　ソロモンは、しゃがみ、カールと目線を合わせる。<br />
<br />
「貴方は、貴方が僕を恨んでいると思わせたかった。違いますか？　つまり、貴方は……」<br />
<br />
　もう、共に生きることが叶わないのなら、せめて、この命の幕引きは貴方の手で。<br />
　ソロモンがそう願いながら先ほどカールの前で跪いたとき、ソロモンは、カールの願いがわかってしまったのだ。カールの想いは、きっと、ソロモンのものと同じなのだろうと。<br />
<br />
　ソロモンは、カールの顎を手のひらの上に乗せる。<br />
<br />
「貴方は、僕に殺されたかった。他の誰でもない僕の手で。だから、貴方は僕を憎む振りをした。……僕のことを、憎んだことなどなかったのに」<br />
<br />
　最後の一言は賭けだった。カールが自分と同じ想いを持っているのかどうか、確定するにはまだ、あと１ピース足りない。<br />
<br />
「ああ、そうさ。笑えばいいっ！　私はずっと、ずっと、お前に騙されたときのままだっ！　お前に裏切られても、お前に殺されても、それでも出会ったときからずっと……っ！」<br />
<br />
　それ以上の言葉は、いらなかった。<br />
　ソロモンはぎゅう、とカールを抱きしめた。<br />
　<br />
「……貴方の言葉が嬉しいと言ったら、怒りますか？」<br />
「お前は、本当に私を荒らし回って…っ…！！」<br />
「荒らしついでに、厚かましいお願いをしてもよろしいですか？」<br />
<br />
　ソロモンは、カールの耳元で、そっと囁く。<br />
<br />
「……なんだ？」<br />
「一緒に、逃げてしまいましょう？」<br />
「！？」<br />
<br />
　カールが弾かれたように身を引こうとするが、ソロモンはその肩を左手でしっかりと捕まえる。<br />
<br />
「貴方にはお話したいことが沢山ある。それは、絶対にハロウィンの夜が終わる前に尽きることはない。……だから」<br />
<br />
　ソロモンは、カールの前に右手を差し伸べた。<br />
<br />
「全てを、やり直しましょう。その為に逃げるんです。……百年近く、言うのが遅れてすみません」<br />
<br />
　それは、ずっと、言いたくて、けれど言えなかった短い言葉。<br />
<br />
　カールはじっと、ソロモンの手を見つめる。<br />
　ああ、早く、この手を取ってくれと焦れるソロモンを余所に、カールは自分自身と戦うように、何度も手を取ろうとしては首を横に振る。<br />
　やがて、カールは動きを止め、意を決したように、ソロモンの瞳を見た。<br />
<br />
「失敗すれば、お前も死ぬことになるぞ」<br />
「さっき言ったでしょう？　あなたのいない世界を、生きている意味なんてないんです」<br />
<br />
　カールは、そうか、と言ってから、ソロモンの手を取った。<br />
<br />
「お前は本当に、言うべきことを言うのが遅い」<br />
「奥手なので」<br />
<br />
　悪びれずに言ったソロモンが手を取ったまま立ちあがると、カールも立ちあがった。<br />
　これで抱きしめてキスでも出来れば最高なのだが。<br />
　ソロモンは、一番の懸念事項を見据える。グレゴリーは呆然と立ち尽くしていたが、ソロモンの視線に気づくと目をぎらつかせた。<br />
<br />
「……面白い！　面白いぞ！！　カール！　生と死の理さえねじ曲げるつもりか！！」<br />
「ここまで付き合わせて悪かった、グレゴリー。……だが面白いものが見られたからいいだろう？　『退屈しのぎができればいい、あわよくばソロモンが死ぬならもっと良い』と言っていたしな」<br />
「……そういう約束だったんですか。　僕が貴方の元に辿り着く前に殺されたどうするつもりだったんですか？」<br />
「それは考えていなかった」<br />
<br />
　カールの顔を見て、何故ここで無邪気な笑みを浮かべるんだとソロモンは思う。本当に考えていなかったのか、それとも、ソロモンなら必ずカールの元へたどり着くと言う信頼だったのか。<br />
<br />
「……仕方のない人ですね」<br />
<br />
　まぁ、どちらでもいい。今、自分は生きている。<br />
　問題にしなければいけないのは、銀髪を逆立てて、怒っているのか歓んでいるのかよくわからないおぞましい顔をした悪魔だ。<br />
<br />
「……見逃して、くれるわけはないですね」<br />
<br />
　一応、訊いておく。<br />
<br />
「……愚問だな。このような好機、二度とはない」<br />
<br />
　グレゴリーの赤く光る瞳が、ソロモンとカールの二人の姿を舐めるように追う。<br />
<br />
「ですが、貴方は僕を殺せないのでは？」<br />
「そう。我々のような存在は、自分に死をもたらした者以外の生者に手を出すことは許されない。だから私はお前を殺せなかった。お前は私の死に関わっていなかったからな。……しかし、今のお前のように理を曲げようとする者は、話が違う」<br />
<br />
　グレゴリーは片手を腹の前で横切らせ、頭を深々と下げてから、叫ぶ。<br />
<br />
「大義名分をありがとう！！　お前達に心の底から感謝する！　……死者と生者の理を曲げる者は断罪せねばなるまいっ！」<br />
<br />
　グレゴリーは狂気の笑みを浮かべながら、両手を上げた。<br />
　すると、グレゴリーを中心として、床に半径数メートルにわたる青白く光る円が描かれる。<br />
<br />
「我らが主！！　偉大なる長兄殿！！　そしてその他大勢の我らが眷族っ！　死者と生者の境目さえ曲げようという彼らを存分に嬲り殺してあげよう！！」<br />
<br />
　歓喜の声に答えるように、地より、知った顔の人々が出てくる。<br />
<br />
「これはこれは」<br />
「殺る気に充ち溢れていますねぇ」<br />
<br />
　どこからどう見ても、ソロモンとカールに対して好意的な表情を浮かべてはいないヒトビトの群れを眺めながら、二人は何処か楽しそうに口にする。<br />
<br />
「十一月を迎えるまで逃げ切れば我々の勝ちだ。……とりあえず、一年間は」<br />
「一年後のハロウィンに、またぞろぞろと出てくると？」<br />
「多分そうだな。……怖気づいたか？」<br />
<br />
　カールは挑戦的な瞳で言った。<br />
<br />
「まさか。貴方にいい所を見せる機会が増えるのは、願ってもないことです」<br />
<br />
　そうか、とカールがからからと笑った。<br />
　ああ、こんな風に笑いあえる日が来るなんて、思わなかった。<br />
　しかし残念ながら、こんな短い時間で満足する気はない。今まで傷つけ合ってしまった時間を帳消しに出来るぐらいに、カールとの時間がもっともっと欲しい。<br />
　その為なら、何を血祭りにしても構わない。<br />
<br />
「さあ……」<br />
「では……」<br />
<br />
　二人は、グレゴリーとその他大勢を前に、立つ。<br />
<br />
『十月の果てへ』<br />
<br />
　二人で、しっかりと手をつなぎ、同じ言葉を重ねる。<br />
　同じ音を喉から同時に出している、それだけで満ち足りる。　そして、こんな手の握り方のしたのは、いつ以来だろう。触れたところから、身体の隅々まで歓びが駆け巡るような。<br />
　きっとあれは、学生時代にデートに行った時だろうか？　二人でなら、どこままででも行けると、手をつないで道を歩いた、あの時の。<br />
<br />
　二人の瞳が赤く染まり、その口元はにぃ、と歪む。<br />
　その顔は、二人の周りを浮かぶ、かぼちゃのランタンに、そっくりだった。<br />
<br />
『LET’S DANCE！！』<br />
<br />
　二人が、揃って宙を舞った。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
＜終＞<br />
<a href="http://bloodnovel.blog.shinobi.jp/Entry/1/">戻る</a><br />
]]> 
    </content>
    <author>
            <name></name>
        </author>
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    <id>bloodnovel.blog.shinobi.jp://entry/71</id>
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    <published>2010-11-01T00:58:19+09:00</published> 
    <updated>2010-11-01T00:58:19+09:00</updated> 
    <category term="未選択" label="未選択" />
    <title>十月の果てへ踊れ　４</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<br />
<br />
<br />
<div style="text-align:center"><span style="font-size:220%">＜十月の果てへ踊れ　４＞</span></div><br />
<br />
<br />
<br />
　カールはふらふらと、通路の壁に片手をつきながら、薄暗い中を歩いていた。<br />
　壮絶な笑みを口元に浮かべながら、彼は泣いていた。<br />
　自分がついさっきしたことを、後悔はしていない。<br />
　全ては自分が、望んだこと。<br />
　全ては自分が、成したこと。<br />
　誰に命令されたわけでもない、自分の望みのために、したこと。<br />
　それでも、ソロモンの顔を見ると、声を聞くと、呼吸がまともに出来るわけなどなくて、”演じている”最中に何度も途中で言葉を切ってしまった。グレゴリーがいなかったら、最後まで演じることは難しかっただろう。<br />
　やはり嘘をつくのは下手だなと自嘲する。<br />
　たとえどんなに時間が経とうとも、どんなに気持ちを偽ろうとも、どんなに必死に自分を騙そうとしても、ソロモンを想う心は、カールが人間であったときのものと少しも変わっていない。もうあの日々から、百年近く経っているというのに。<br />
<br />
「ファントム！　大丈夫っ！？」<br />
<br />
　ルルゥがドアを開けたのが見えるが、その言葉はカールの耳に入らない。<br />
　カールは部屋に入りドアを閉めると、ドアを背にしてその場に座り込んだ。	<br />
<br />
「……私は、嘘をつくのが下手なようだ」<br />
「頑張った。頑張ったよ」<br />
<br />
　ルルゥはしゃがんで言う。<br />
　この娘をこの場へ呼んだのはカールだ。<br />
　今宵の宴の参加者であるシフの二人が、宴に参加する代わりにこの娘に会わせろと申し出ていたからだ。<br />
<br />
『この娘に会わせてくれてありがとう。言われた通り、どんな役目でも果たそう』<br />
<br />
　あの二人が果たす役目は、いわば斬られ役。<br />
　死者が殺されてもまた元の場所に戻るだけだが、それでもルルゥに斬られる現場を見せるわけにはいかないとシフの二人が言っていたので、宴が終わるまでルルゥにはこの部屋を出ないように厳命してある。11月を迎えれば、どのような結末になるにしろ、この宴は終わる。だから、11月がやってくるまでは、この部屋から出てはいけないと。<br />
<br />
『もう、この娘には会えないと思っていた。どんな理由であれ、会わせてくれて感謝する』<br />
<br />
　微笑んでいたシフの二人組の姿を思い出しながら、カールは目を閉じる。<br />
　あの二人は、ソロモンに斬られたとしても、元の死者の世界へ戻るだけだ。<br />
　しかし、カールが自分に望む結末は、違うところにある。<br />
<br />
　生きている間、カールは永い時間ソロモンに心を囚われ続けた。死んだら楽になれるのだろうかと思っていたら、そんなことはなかった。妄執にも似た想いは、死しても消えることはなく。苦しみはむしろ増すばかり。<br />
<br />
　嗚呼、それでも、忌わしい程に、<br />
　頭に焼きついて離れないのは、<br />
　カールが人として死んだときも、<br />
　カールがシュヴァリエとして死んだときも、<br />
　カールから目を反らすソロモンの姿。<br />
<br />
　何故、二回もあんな絶望を味合わなければならなかったのだろう。<br />
<br />
　せめて、この姿を、あの碧の双眸に映して欲しかった。<br />
　終わりゆくこの身は、視界に入れる価値もなかったのだろうか。<br />
　ならば、蔑む瞳で見下してくれればよかったのだ。そうしたら、この魂は跡形もなく消え去ることができたのに。<br />
<br />
　心を奪われ、人としての命を奪われ、翼手の命も奪われ。<br />
　死してもまだ、あの男に魂を囚われている。<br />
<br />
　そんな自分が望んだのは、たった一つのこと。<br />
<br />
“もし、ほんの少しでも慈悲があるのなら、どうか渾身の憎悪で、心も身体も粉々に破壊しつくし、魂を跡形もなく焼きつくしてください。もう二度と、黄泉返ることも出来ず、死者の世界で存在出来ない程に”<br />
<br />
<br />
<br />
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<br />
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]]> 
    </content>
    <author>
            <name></name>
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    <published>2010-11-01T00:56:12+09:00</published> 
    <updated>2010-11-01T00:56:12+09:00</updated> 
    <category term="未選択" label="未選択" />
    <title>十月の果てを踊れ　３</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<br />
<br />
<div style="text-align:center"><br />
<span style="font-size:220%">＜十月の果てへ踊れ　３＞</span></div><br />
　<br />
<br />
<br />
　ソロモンは、手紙に書かれていた場所へとやってきていた。<br />
　そこは、東には月が浮かび、西には暗雲が垂れこめる、廃墟と化した教会だった。入口の扉には、趣味の悪いかぼちゃのランタンがいくつかつりさげられている。<br />
　「Happy Halloween」と書かれたあの手紙に綴られた文字。間違いない。あの手紙の文字は確かに、グレゴリーの筆跡だった。<br />
　グレゴリーは1918年に死んでいる。<br />
　そんなことはわかっていたが、ソロモンにグレゴリーの名で手紙を出す必要のある者など、本人以外にありえないし、そもそも、ソロモンとグレゴリーが知り合いであることを知る者の数は極めて少ない。<br />
　何が待ちかえていても構わなかった。こんな趣味の悪い手紙をよこすのが誰なのか、ソロモンは知りたかった。<br />
　だから、ソロモンは手紙に書かれたこの場所へと、のこのことやってきたのだ。<br />
　ソロモンは扉を開けた。<br />
　礼拝堂の筈なのに、椅子は一つもない。ただステンドグラスから入る月明かりが、何もない空間を照らす。そして、祈る相手もいないのに、ステンドグラスの下で躓いている人影が一つ、あった。その人影は黒いローブを着て、フードを被っているのか、髪の色すらわからない。<br />
　ソロモンは、右手を刃化させて、その人物に斬りかかった。<br />
　その瞬間、その人物は地を蹴り、空中で回転しながら、ソロモンの頭上を通り過ぎる。<br />
　ソロモンが横なぎの一撃を空振りに終わらせると、その人物はソロモンの背後に着地した。<br />
<br />
「これは酷い。案内人でしかない私に、そのような蛮行を働くとは」<br />
<br />
　ソロモンは、その人物の方を振り向く。<br />
　その人物がフードをとると、ソロモンの予想した通りの人物の顔が現れた。<br />
<br />
「あなたは、誰ですか」<br />
<br />
　ソロモンは、それでも問う。姿を変えることの出来る者達を、ソロモンは多く見てきたからだ。訊いたからと言って相手が正直に答えるとは限らないが、それでも相手の反応を見ることは出来る。<br />
<br />
「お前の見た通りの者だ」<br />
<br />
　腰まである銀髪を靡かせながら、グレゴリー・エフィーモヴィチ・ラスプーチンの顔をした男が言った。<br />
<br />
「……グレゴリーは死んでいます」<br />
「『亡くなっています』の間違いだろう、ソロモン」<br />
<br />
　ああこれは本物のグレゴリーだ、とソロモンの頭が直感的に反応した。<br />
<br />
「僕が訊くべきなのは、『何故』ですか？　それとも『どうやって』ですか？」<br />
<br />
　ソロモンは辺りを警戒しながら、グレゴリーを睨みつけた。どうやって死んだ筈のグレゴリーが復活したのかはわからないが、グレゴリーのペースに呑まれてはいけない。グレゴリーの目的が、まさかソロモンと、過去の話を肴にハロウィンを楽しく祝おうというものあるわけはない。グレゴリーが嬉しそうにしている時に、いいことなど絶対に起こるわけがないのだ。<br />
<br />
「私は、あくまで今宵の宴の案内人に過ぎない。むしろ、私に興味を持たれては困る。今日は何の日かな？　ソロモン」<br />
「ハロウィンです」<br />
「そうハロウィンだ！　知っている筈。ハロウィンとはもともと、死者と、生者の境目が意味をなさなくなる日！」<br />
<br />
　グレゴリーはその場にくるりと舞うように一回転し、手をいっぱいに広げた。<br />
<br />
「さぁ、今宵この男をお恨みの皆々様！　姿をあらわすがいい！！　そしてこの男の驚く姿をとくとご覧あれ！！」<br />
<br />
　グレゴリーが手を挙げた瞬間、礼拝堂中に大量のジャックオーランランが浮かび、暗闇を照らす。それと同時に、ソロモンを囲うように四人の人物が姿を現していた。<br />
<br />
　ジェイムズ・アイアンサイド。<br />
　マルティン・ボルマン。<br />
　名前は知らない、しかし見たことのあるシフが二人。<br />
<br />
　その四人の顔を見渡してから、ソロモンは次に現れるであろう人物の顔を思い浮かべる。<br />
　まさか。<br />
　そう思った時、誰かが、ソロモンの真後ろに飛び降りたのが、わかった。<br />
　ソロモンは、振りむくことができなかった。<br />
　着地の仕方、立ち上がる音、気配。<br />
　それだけで、誰が自分の後ろに立っているのか、わかる。彼の身体のことなら、自分はなんでもわかるのだ。その仕草から奏でられる音すらも。<br />
　何故、こんな状況で、自分の心臓が動いているのか、呼吸ができるのか、自分で理解に苦しむ。今自分の後ろに立っているのは、また会えるなど、万が一にも考えたことのない相手だというのに。<br />
<br />
「ソロモン・ゴールドスミス」<br />
<br />
　絶対に聞き間違うわけなのない、かつての恋人の声が耳に響く。<br />
　相手もソロモンに背を向けているのだということが、声の聞こえ方からわかる。<br />
<br />
「今宵、お前を呼んだのは、私だ」<br />
「それは光栄です。……頂いた招待状の名前には、そこの彼の名前があったものですから、貴方が僕を招いたとは思いませんでした」<br />
<br />
　停止しきっている頭をなんとか回転させ、ソロモンは言葉を返す。<br />
<br />
「……それは謝っておく。お前を呼ぶのかと思うと、ペンを握るのもままならなかった。代筆を頼んだんだが、まさか招待人の名前まで変えているとは思わなかった」<br />
<br />
　どういう意味ですかと聞こうとしてやめる。“お前を呼ぶのかと思うと、ペンを握るのもままならなかった”と、淡々と言われると、どのようにも解釈できてしまう。良い解釈にも、悪い解釈にも。<br />
　私の好きにしていいと言っていたではないか！　とカールに抗議するグレゴリーを無視して、<br />
<br />
「……お招き頂いた理由を聞いても？」<br />
<br />
　ちらり、と肩越しに後ろを振り向いて、ソロモンは尋ねる。<br />
　ソロモンが目にしたのは、予想通り、長い艶やかな黒髪、蝙蝠を思わせる仮面、黒いマントの人物の後ろ姿だった。<br />
　<br />
「…………」<br />
<br />
　カールは答えない。<br />
　一体どんな表情をしているのか、わかればいいのにと思うが、残念ながら全くわからない。<br />
　沈黙が続いてから、少し、カールが俯いたような気がした。<br />
<br />
「どうしたカール！！　ホストが“お客様”をお待たせするとは！　お前が始めないなら、我々で初めてしまうぞ！？」<br />
「……それは、困る」<br />
<br />
　叫ぶグレゴリーの言葉に、カールは頭を上げた。<br />
　どうしてだろうか。ソロモンはカールが無理をしている気がした。<br />
　カールは地を蹴り跳躍するとソロモンの頭上を越えて、ソロモンの足元に着地し、跪いた。<br />
<br />
「ソロモン・ゴールドスミス。私は今宵の宴の主宰であるカール・フェイオン。我々の招きに応じて頂き感謝する。貴殿には、これからの宴をたっぷりと楽しんで頂きたい。まずは、紹介したい」<br />
<br />
　芝居がかった声でカールが言い、跪いたまま指を鳴らすと、グレゴリーが一歩手前に出た。<br />
<br />
「お前を厭う案内人」<br />
<br />
　グレゴリーが言うと、カールが再び指を鳴らし、それを合図にグレゴリーが一歩下がり、シフの二人が一方前に出る。<br />
<br />
『お前に返り討ちにされた者』<br />
<br />
　シフの二人が言うと、カールの指が鳴る。<br />
　シフの二人が下がり、マルティンが一歩前に出る。<br />
<br />
「お前に死神の鎌を振るわれた者」<br />
<br />
　カールの指が鳴る。<br />
　マルティンが下がり、ジェイムズが一歩前に出た。<br />
<br />
「お前が死の呼び水となった者」<br />
<br />
　カールは指を鳴らしてから、ジェイムズが下がると、ゆっくりと立ち上がった。<br />
<br />
「そして……」<br />
<br />
　カールの表情は、長い髪に隠れて、また見えない。<br />
　カールが、大きく息を吸い込んだのが聞こえた。<br />
<br />
「お前に、地獄へ堕とされた者！！！！」<br />
<br />
　カールが顔を一気に上げ、髪が宙を舞ってから定位置に戻っていく。<br />
<br />
「我々は、お前と今宵を踊り狂うために、死者の世から舞い戻ってきたのだ！」<br />
<br />
　カールが言うと、残る五人から拍手が巻き起こる。<br />
<br />
「……ハロウィンの夜をたっぷりと楽しんでおくれ。まず前菜をしっかり味わって頂こう！　主食をお出ししてもよい頃合いになったら呼んでおくれ！！」<br />
<br />
　カールが一気にそう言うと、ソロモンが何かを口にする前に、カールは姿を消した。<br />
　その瞬間、ソロモンは地を蹴り、刃化させた腕をグレゴリーの首筋に突きつけていた。<br />
<br />
「何ですか、アレは」<br />
「……何故、私に訊く？」<br />
「脚本はあなたが書いた。カールはそれを演じた。違いますか？」<br />
<br />
　カールの喋り方は、どこかおかしかった。まるで言いたくないセリフを無理矢理言わされているような。ならば、黒幕がグレゴリーで、カールが付き合わされていると考えるのが妥当だ。<br />
　<br />
「確かに。それは認めよう。カールは『演じている』」<br />
<br />
　その時、ソロモンは自分の見たものが信じられなかった。<br />
　ソロモンの隙をついて、グレゴリーの刃化した腕が、ソロモンの首を切り落とした…筈だった。<br />
<br />
「！？」<br />
<br />
　ソロモンは自分の首元を押さえた。しかし、落とされた筈の首はしっかりついている。<br />
　グレゴリーの刃は確かに、ソロモンの首を通った筈なのに、ソロモンの首を切り落とさずにすり抜けていったのだ。<br />
<br />
「最初にも言ったわけだが。一応言い直しておいてやろう。私はただの案内人。残念ながら、私には参加者たる資格がない。そして、お前も私を黙らせることは出来ない。……しかし、彼らにはその資格がある。お前を殺す資格が」<br />
<br />
　グレゴリーが指差した先を振り返ると、マルティン、ジェイムズ、シフの二人組が、ソロモンへとじりじりと近づいてきていた。<br />
<br />
「SAYAの血がなくとも我々が死ぬことはある。カールの真意が知りたいのなら、どうすればいいかわかっているな？　……彼らは、本気でお前を殺しに来るぞ」<br />
<br />
<br />
<br />
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<br />
<a href="http://bloodnovel.blog.shinobi.jp/Entry/1/">戻る</a><br />
]]> 
    </content>
    <author>
            <name></name>
        </author>
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    <id>bloodnovel.blog.shinobi.jp://entry/69</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://bloodnovel.blog.shinobi.jp/%E6%9C%AA%E9%81%B8%E6%8A%9E/%E5%8D%81%E6%9C%88%E3%81%AE%E6%9E%9C%E3%81%A6%E3%81%B8%E8%B8%8A%E3%82%8C%E3%80%80%EF%BC%92" />
    <published>2010-11-01T00:51:47+09:00</published> 
    <updated>2010-11-01T00:51:47+09:00</updated> 
    <category term="未選択" label="未選択" />
    <title>十月の果てへ踊れ　２</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<br />
<br />
<br />
<br />
　ごめんなさい。突然で本当にごめんなさい。<br />
　どうしても独りで行かないといけない用事が出来ました。<br />
　ハロウィンが終わったら、必ず帰ってくるのでどうか心配しないでください。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<div style="text-align:center"><span style="font-size:220%">＜十月の果てへ踊れ　２＞</span></div><br />
<br />
<br />
<br />
　沖縄では大騒ぎになってるだろうなぁ。カイには悪いことしたなぁ。<br />
　沖縄に残してきた手紙のことを思いながらも、ルルゥは飛行機の窓から見える星空をじぃっと見ていた。<br />
　空港周辺の天候があまり良くなかったので、離陸の時はガタガタと揺れたので正直怖かったが、水平飛行に入ってからは、高度１万メートルから見える星空と月の美しさに、ルルゥは目を輝かせていた。<br />
<br />
「皆で乗りたかったなぁ……」<br />
<br />
　思い浮かべるのは、主に、カイや響、奏のこと。<br />
　今頃心配してるんだろうなぁ……、ああ、でもまだ気づいてなくて、明日の朝辺りには爆弾が爆発したみたいな大騒ぎになるんだろうなぁ。<br />
　ハロウィンのランタンを一緒に作ろうねって、響、奏と約束したのに。一緒にハロウィンやろうねって言ったのに。<br />
　ルルゥの妹分である双子との約束を思い出して、ルルゥは席でぎゅぅ、と服をつかんだ。<br />
　果たせない約束なんて、本当はするべきではない。<br />
　響、奏と約束したとき、ルルゥは、今年のハロウィンは二人と一緒にいられないことは前々からわかっていたけれど、ハロウィンハロウィン！　と楽しそうにしている二人との約束を断ることは出来なかったのだ。<br />
<br />
（ごめんね、二人とも。今度あたいが手作りのお菓子をいっぱい作ってあげるから）<br />
<br />
　心の中で謝りながら、ルルゥはリュックの中の携帯電話を出そうとして、あ、飛行機の中で携帯は駄目だったんだ……と思いだしてリュックに戻す。一昨年にカイに買ってもらってたときにすぐに携帯と格闘をはじめて、今ではカイを遙かに超える携帯電話のプロフェッショナルだ。<br />
　ルルゥの秘密のメールフォルダには、沖縄にいる誰にも言えないメッセージが沢山詰まっている。特にここ数日は、来る日のために連絡をとることが多かったし、こうしている今でも彼らからメールが来ているかもしれない。<br />
<br />
（でも飛行機が落ちちゃったら嫌だしなぁ……）<br />
<br />
　飛行中の機内で携帯電話の電源をONにしていると、飛行機の運航に支障がでるらしい、というのはよく聞く話だが、実際どれぐらいの影響を与えるのかはよくわからない。<br />
　もし電源を入れた瞬間に飛行機が落ちたら！　と思うと、ルルゥは携帯電話の電源をONにすることなど到底出来なかった。<br />
　飛行機から降りたら、すぐにメールチェックをしよう！<br />
　そう心に決めてからルルゥは寝ることにした。<br />
<br />
<br />
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<br />
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<br />
]]> 
    </content>
    <author>
            <name></name>
        </author>
  </entry>
  <entry>
    <id>bloodnovel.blog.shinobi.jp://entry/68</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://bloodnovel.blog.shinobi.jp/%E3%82%BD%E3%83%AD%E3%82%AB%E3%83%AB%EF%BD%93%EF%BD%93/%E5%8D%81%E6%9C%88%E3%81%AE%E6%9E%9C%E3%81%A6%E3%81%B8%E8%B8%8A%E3%82%8C%E3%80%80%EF%BC%91" />
    <published>2010-11-01T00:49:11+09:00</published> 
    <updated>2010-11-01T00:49:11+09:00</updated> 
    <category term="ソロカルＳＳ" label="ソロカルＳＳ" />
    <title>十月の果てへ踊れ　１</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<br />
<br />
　ご注意書き。<br />
　このお話は、ご都合主義万歳な話です<br />
　そして、ある登場人物は、小説版とマンガ版をＭＩＸした仕様になっています。<br />
　もう一度書きますが、このお話は本当にご都合主義です。<br />
　そして、アニメ版でもしソロモンが生きていたら、というそんなお話です。<br />
　それでもよろしければ、お進みくださいませ。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<div style="text-align:center">お久しぶりです。<br />
あの事件が終わってから、四年の歳月が流れましたが、貴方は如何お過ごしでしょうか。<br />
<br />
わたくしが貴方に最後にお会いしてから、とてもとても長い歳月が経ちました。<br />
<br />
四年前の事件に関わることが出来なかったのは大変残念でございます。<br />
もしも私が、四年前の一連の事件に関われていたなら、<br />
もっと面白いことにしてやったのに！<br />
<br />
おっといけない、話がずれました。<br />
<br />
わたくしは、貴方をお呼びする案内人で御座います。<br />
別紙に記載しました、時刻・場所へと貴方に来ていただけたなら、<br />
これほど喜ばしいことはございません。<br />
<br />
オ前ハ本当ナラ四年前ニ死ンデイタ筈ナノニ。<br />
ドウイウワケダカ、マダオ前ハ生キテイル。<br />
生キ残ッタ罪ヲ贖ウガイイ。<br />
<br />
おっと、失礼しました。つい本音が。<br />
<br />
貴方を厭う案内人<br />
<br />
貴方に返り討ちにされた者<br />
貴方に死神の鎌を振るわれた者<br />
貴方が死の呼び水となった者<br />
<br />
そして、貴方に地獄へ堕とされた者<br />
<br />
死者と生者の境界が失われる今宵の宴にて、貴方を一同、お待ち申し上げております　<br />
<br />
Happy Halloween!<br />
<br />
Григорий Ефимович Распутин</div><br />
<br />
<br />
<br />
<span style="font-size:220%"><div style="text-align:center">＜十月の果てへ踊れ　１＞</div></span><br />
<br />
<br />
<br />
　例えば、何もない真っ白な部屋。<br />
　距離感を麻痺させるような壁に囲まれて、自分以外の何も存在していない部屋。<br />
　そんなところに放って置かれれば、時間の感覚も空間を知覚する能力も失われ、人は間もなく発狂するという。<br />
　では。<br />
　真っ白とは決して言えないが、数年間全く変わることのない部屋で、時間の感覚を完全に失っている自分は、何なのだろう。<br />
　生きているのか死んでいるのかもわからない。鎧戸を締め、さらに分厚いカーテンも掛けた窓の外のことなど知る由もない。<br />
　ただ、変わることのない部屋でぼんやりとしているだけの自分は、狂っているのか、いないのか。そんなことを考えられるということは、狂っていない証左なのだろうか？<br />
　ぼんやりとするか、気まぐれに淹れられる茶と菓子を口にするか、奇跡的に唯一残っていたかつての恋人の写真を見ているだけの日々。<br />
　一体どれだけの時が経ったのかと考えていたら、あの事件から四年が経ったということを、先日ある者に言われた。<br />
　カールを失い、主を失ってから四年。<br />
　四年という月日は長いのだろうか短いのだろうか。……そんなことはどうでもいい。<br />
　ソロモン・ゴールドスミスは、ソファに身体を横たえたまま、ガラスのテーブルに手を伸ばす。目的のものに指がほんの少し届かず、身体を起こしてから、ソロモンは写真立てを手にとって、再びソファに寝転がった。<br />
<br />
　嗚呼、かわいいなぁ。<br />
　<br />
　セピア色に染まったその写真を見るたびに、ソロモンは甘ったるい溜息をつく。<br />
　カールがまだ学生だった頃の、写真。緊張した面持ちで、けれど「笑って笑って」と言われて懸命に笑おうとしている、そんな写真。<br />
　今でこそカメラは一般人が手にすることの出来る小さな玩具になっているが、当時はまだ、写真一枚撮るのに時間も金も労力もかかる時代だった。<br />
　カールの写真が欲しいと言ったら、ソロモンの手に写真が渡るのが恥ずかしいのと、写真撮影そのものへの好奇心を必死に天秤にかけて、カールは唸りながら後者を選んだのだ。<br />
　今、思えば。<br />
　仏頂面をしていようが、怒ろうが、結局彼は、いつも最後には幸せそうな笑みを浮かべていたのだ。<br />
　自惚れではなく、そんな顔をさせていたのは、自分の存在だったのだと、後になって思う。<br />
　彼を裏切ってから、そんな笑顔を見ることがなくなって、初めて気付いたのだ。<br />
　嗚呼、あの頃に戻りたいなぁ、といくら願ったところで、願うたびにそれが不可能だと思い知った。<br />
　針が逆回りをする時計をいくら作ったところで、過去には戻れない。<br />
　裏切った自分から、<br />
　“それでも愛しているから、また恋人になってほしい”<br />
　など言えるわけもなかった。<br />
　だから、ソロモンは……。<br />
<br />
「ソロモン」<br />
<br />
　思考の海に沈んでいたソロモンを、男の声が引き揚げる。ソロモンは写真立てをテーブルに置き、大儀そうに身体を起き上がらせた。<br />
<br />
「お茶をお持ちしました」<br />
<br />
　そう言って、男―ハジは、ソロモンが飲むか飲まないかを聞かずに、勝手に盆をテーブルの上に置いて茶を入れ始める。<br />
　薔薇の花弁が刻まれた金縁のティーカップに、鮮やかな紅色のローズティーが注がれる。咲き乱れる薔薇園を思わせる香りが立つ中、茶を淹れた者の手によって、青い薔薇の花弁がひとひら、浮かべられた。<br />
　真っ青だった花弁は、一部を残して茶の紅を吸って紫に染まる。<br />
　何か意図があるのか、とソファに座るソロモンが顔を上げて目で尋ねると、茶を入れた者――ハジは、首を横に振った。<br />
　<br />
「薔薇が見事に咲いていましたから、合うのではないかと思っただけです」<br />
<br />
　ハジはいつも通りの無表情のまま、ぶっきらぼうに言う。言葉使いは丁寧だが、そこには彼の主に対するような敬愛の情は全くない。元々ソロモンもハジにそんなものは求めていないから別段気にはしない。最低限の礼儀が尽くされていればそれでよかった。<br />
　ソロモンはハジの淹れた茶を飲みながら、部屋を見渡す。<br />
　ここは、四年前に死んだアンシェル・ゴールドスミスの、ＥＵ内にある邸宅だ。<br />
　実は、名義はアンシェルではないのだが、税金対策の為にアンシェルが作り出した架空の人物のものだ。<br />
　普段使用する食器や家具以外、部屋は四年前と変わらない。一日中、花の世話をするか、掃除をするか、剣の稽古か、気まぐれにソロモンに何かを作るかのどれかの行動しかとらないハジの手によって、部屋の埃は毎日払われているから、屋敷の主がアンシェルからソロモンに変わったこと以外に、屋敷にはなんの変りもない。<br />
　そんな、何も変わらない屋敷から一歩も出ないソロモンが、小夜とディーヴァの戦いから四年が経ったということに気づいたのは、少し前に、ハジが「あれから四年経ちましたね」と呟いたからだ。<br />
　完全に月日の流れの感覚が麻痺していたソロモンには、「四年」が短いのが長いのかわからなかった。<br />
　正直、何年経とうがどうでもいい。<br />
　生きているのか死んでいるのかわからないような日々を送っているソロモンにとっては。<br />
<br />
「ところで」<br />
「……なんでしょう」<br />
<br />
　ソロモンが物憂げに答えると、ハジがテーブルに置いた皮のファイルを手にとり、それを開きながら中身をソロモンに見せた。<br />
<br />
「このようなものが届いていました」<br />
<br />
　そこには、一通の封筒が挟まれていた。<br />
　封筒を縁取る大仰な銀色の飾りではなく、ソロモンの目を捉えたのは、封筒の真ん中にある血色の封蝋だった。<br />
<br />
「いまどき、このような封蝋を使う人がいるんですね……」<br />
<br />
　ソロモンが呟き終ると同時に、ハジはペーパーナイフをソロモンに渡す。ソロモンは礼も言わず封を開けると、中に入っていた紙の感触に目を丸くする。<br />
　中には羊皮紙が二枚入っており、一枚は地図が書かれたものであり、一枚には達筆な文字がつづられていた。<br />
　メッセージの書かれた手紙の最後の署名には、こう書かれていた。<br />
<br />
Григорий Ефимович Распутин<br />
<br />
――　グレゴリー・エフィーモヴィチ・ラスプーチン。<br />
<br />
<br />
<br />
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<br />
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]]> 
    </content>
    <author>
            <name></name>
        </author>
  </entry>
  <entry>
    <id>bloodnovel.blog.shinobi.jp://entry/65</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://bloodnovel.blog.shinobi.jp/%E3%82%BD%E3%83%AD%E3%82%AB%E3%83%AB%EF%BD%93%EF%BD%93/%E3%83%8F%E3%83%AD%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%B3%E2%98%86%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%88" />
    <published>2008-11-01T00:38:15+09:00</published> 
    <updated>2008-11-01T00:38:15+09:00</updated> 
    <category term="ソロカルＳＳ" label="ソロカルＳＳ" />
    <title>ハロウィン☆ナイト</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<br />
<br />
・　色々と設定は無視の方向でｖｖ<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<span style="font-size:220%">　　　ハロウィン☆ナイト</span><br />
<br />
<br />
<br />
　アメリカ合衆国某所にあるネイサン・マーラー宅が、二人の幼い姫君のハロウィンの為に、気合いの入った飾り付けをされていた。ジャックオーランタンを模したイルミネーションは勿論のこと、本物の南瓜のランタンも随所に置かれている。正面玄関では「HAPPY　HALLOWEEN！！」とおどろおどろしい字が躍っていた。<br />
　外で騒ぎたいであろう姫二人の為に、庭にこれまたハロウィン仕様のテーブルが置かれ、数々の料理が置かれている。<br />
　世にも恐ろしい勢いで料理を腹に収めていく姫二人の面倒を見るのは、なんとも悩ましい魔女姿のネイサンで、ああっ！　もう　せっかくの可愛い衣装が台無しになるでしょう！！　と言いながら二人の後ろについている。<br />
　そのネイサンの魔女姿を見るたびに、ジェイムズはぎょっとしながらも、姫二人の為に屋敷から料理を運ぶ。堅物そのものの男が羽織るのはムンクマントで、頭には大きな悪魔の角をつけていた。<br />
　庭の隅では吸血鬼伯爵の格好という洒落にならない格好をしたアンシェルが、静かに椅子に座って新聞を読んでいた。<br />
<br />
　「グレゴリー格好いいーｖ」<br />
　「格好いいーーｖｖ」<br />
<br />
　ノリの悪いアンシェルを尻目に、幼い姫二人――響と奏は、今しがた到着したグレゴリーの服に興味津々だ。グレゴリーの服は黒のカソックで、ロマノフに仕えていた頃は毎日着ていたものだったが、響と奏にこの姿を見せるのはこれが初めてだった。<br />
<br />
　「これはカソックというのですよ。昔はよく着ていたんですが」<br />
<br />
　銀髪をかきあげながら、長身のグレゴリーは腰を落として二人の姫君に笑いかける。<br />
<br />
　「かそっく」<br />
　「かそっく」<br />
　「そう。カソックです」<br />
<br />
　二十一世紀初頭に生まれた二人には、カソックという服装は決して馴染み深いものではない。<br />
　この服を着てきてよかった…と、グレゴリーは姫二人を独り占めにして、内心満足げににやりと笑う。<br />
　…が、そんなグレゴリーの至福の時間は長くは続かなかった。<br />
<br />
　「ソロモン！」<br />
<br />
　奏が嬉しそうに指差した先には、グレゴリーの憎き天敵である金髪の義弟が立っていた。グレゴリーが思わずソロモンを睨みつけた時には、既に姫二人はソロモンに向かって駆け出して行った。<br />
　グレゴリーが盛大に舌打ちした。<br />
<br />
　「ソロモンも魔法使いだー」<br />
　「魔法使い！　お揃いーー」<br />
　<br />
　可愛らしい魔女の仮装衣装に身を包んだ響と奏がぴょこぴょこと跳ねると、二人のかぶる三角帽子が危なかっしく揺れた。二人は目の前に現れた白い魔法使いを、目を輝かせながら見上げる。<br />
<br />
　「お二人とお揃いとは光栄です。…お二人とも、とてもよく似合っていますよ」<br />
　「響姉様の方が可愛いの！」<br />
　「そんなことないよ。奏の方が似合ってるよ」<br />
<br />
　お互いに向かって「そっちの方が可愛い！！」と言い合いを始めた二人を微笑ましく眺めながら、ソロモンはアンシェルの方に目をやってから頭を下げる。アンシェルは軽く頷いた。<br />
　グレゴリーは何故かいつも以上に敵意を身体中から発散させていたので、ソロモンはいつも通りの微笑を向けるだけで、他には何もしない。<br />
　まだグレゴリーと話してもいないのに、とソロモンが思っていると、<br />
<br />
　「あらぁ、ソロモン。遅かったじゃな～い？」<br />
<br />
　セクシーな魔女に話しかけられ、一瞬ソロモンは逡巡した。<br />
<br />
　「すみません。衣装のことで少しトラブルがあって。…それよりもネイサン、よく似合ってますよ」　<br />
　「あらぁ、本心かしらぁ？」<br />
　<br />
　ネイサンが腰をくねらせると、後ろにいたジェイムズが手に持ったお菓子の入った籠を落としそうになった。<br />
　そのジェイムズを見て、響と奏が喚声を上げながらジェイムズに駆け寄る。<br />
　籠の中へと姫二人が手を伸ばそうとした時、ジェイムズは二人の手が届かないように籠を高く上げ、二人から不満の声があがった。<br />
　なんでー？　どうしてー？　という二人の声にぐさぐさと刺されて、堅物軍人の表情が哀れなものになっていくのを見て、<br />
<br />
　「もう少し、待ってくださいね」<br />
<br />
　ソロモンが言うと、頬を膨らませた二人が振り向いた。<br />
<br />
　「どうして～？」<br />
<br />
　二人のもっともな問いに、ソロモンは何も言わずににこにこと静かに微笑を浮かべ、ネイサンが屋敷へと戻ったのを確認してから、<br />
<br />
　「……それはね……」<br />
<br />
　大幅に、意図的に低くした声で、妖しい笑みをソロモンが口元に浮かべれば、響と奏は、期待に目を輝かせた。何かが始まる、と直感的にわかったのだ。<br />
　<br />
　「今宵がハロウィンの夜だからですよ……」<br />
<br />
　木を揺らすそよ風すらも恐ろしく感じような声音で言った瞬間、屋敷の明かりが全て落とされた。どうやったのか、ランタンに灯されていた火も、全て一瞬で消える。<br />
　真っ暗になった庭で、次は何が起きるのかとわくわくとしながら、小さな魔女二人はあちこちに視線をやる。<br />
<br />
　「さぁ、二人とも。……ハロウィンの夜と言えば？」<br />
<br />
　ソロモンがそう言うと、二人はぱぁ、と目を輝かせた。<br />
<br />
　「呼ぶの？」<br />
　「呼ぶの？」<br />
　「そう、元気な声で呼んでくださいね」<br />
<br />
　響と奏はソロモンの言葉を聞くと、いっせーの！　と言ってから、大きく息を吸い込んで、<br />
<br />
　『PHANTOM―――――！！』<br />
<br />
　声を合わせて、叫んだ。<br />
<br />
　「もう一度」<br />
　『PHANTOM―――――！！』<br />
<br />
　二人の声に応えるように、屋敷の屋根の両端にある巨大ライトが点灯する。それと同時に、屋根の側面でコウモリを形作る赤いイルミネーションが点灯した。<br />
<br />
　「あと一息ですよ」<br />
　『PHANTOM―――――！！』<br />
<br />
　二人が叫ぶと同時に、屋根の両端から中央に向かって、大量のドライアイスが噴射される。すると、その中から人影が現れた。<br />
　響と奏が喚声をあげる。<br />
<br />
　『美しい二人の姫君よ！　今年も私を呼んでくれてありがとう！！』<br />
<br />
　よく通る声が響き渡った瞬間、ドライアイスの膜が消えて、屋上に立つ者の姿が露になった。<br />
　蝙蝠を模した仮面に、燕尾服、そして黒いマントをなびかせる謎の（？）男がそこには立っていた。<br />
<br />
　『今宵はハロウィン。姫君達にはいささか危険な夜だと思うが……』<br />
<br />
　言葉を発しながら、計算されつくした全身の優雅な振り付けを、謎の（？）男は難なくこなしてく。<br />
<br />
　『まずは祝いの言葉を述べよう……。　HAPPY　HALLOWEEN！！！』<br />
<br />
　ばさぁ、とマントを広げる音を立てながら、二人に向かって腕を伸ばす謎の（？）男を、<br />
<br />
　（……輝いてますねぇ……）<br />
<br />
　ソロモンは微笑ましく見ていた。<br />
<br />
　「はっぴぃはろうぃーん！」<br />
　「はっぴぃはろうぃーん！」<br />
<br />
　幼い魔女二人が答えると、謎の（？）男は満足げに口元に笑みを浮かべると、屋根を蹴った。<br />
　跳躍の後、謎の（？）男は響と奏の前に仕えるように跪くとその姿勢のまま、<br />
<br />
　「…姫君…」<br />
<br />
　厳粛に言った。<br />
<br />
　「どうやら姫君達を狙っている者がいるようだ」<br />
<br />
　謎の（？）男が言うと、<br />
<br />
　「食べちゃうわよーん♪」<br />
<br />
　手を伸ばしながら、ネイサンが二人に迫った。<br />
　笑いながらも、きゃーー！！　と響と奏が叫びを上げる。<br />
<br />
　「助けてーー！！ファントムーーー！！」<br />
<br />
　ネイサンの魔の手から二人が逃げ惑いながら叫ぶと、<br />
<br />
　「もし姫君達が私に、甘い宝をくれるというなら、私は一夜限りの騎士＜シュヴァリエ＞となろう」<br />
<br />
　謎の男は答えた。<br />
　それを合図に、ジェイムズがお菓子の入った籠を、響と奏に向けて差し出す。<br />
<br />
　「これ、あげるから助けてーー！！」<br />
　「助けてーーー！！」<br />
<br />
　ジェイムズから籠を受け取り、響きと奏が言った。<br />
<br />
　「姫君達が願うなら……」<br />
<br />
　謎の（？）男はそう言うと、ネイサンに向かって、<br />
<br />
　「悪しき魔女よ！　立ち去れ！！」<br />
<br />
　雄々しく叫んだ。<br />
<br />
「きぃぃぃぃぃぃぃ！！　可愛い女の子の生き血をすすってやろうと思ったのにぃぃ！！！」<br />
<br />
　セクシー魔女は悔しそうな声をあげながら、どこかへと走り去って行った。<br />
<br />
「ありがとう、ファントム！！」<br />
「ありがとう、ファントム！！」<br />
<br />
　響と奏はお礼を言いながら、謎の（？）の男を足元で飛び跳ねた。<br />
<br />
　　＊　　　＊　　　＊<br />
<br />
　謎の（？）男が加わったことで、ハロウィンパーティーは異様な盛り上がりをみせた。<br />
　しかしそんな楽しい時間も、あっという間に過ぎてしまい、謎の（？）の男が恭しく響と奏に頭を下げる時間がついにやってきてしまった。<br />
<br />
　「さて…もう夜も遅い。姫君達はもうベッドに行かなければ」<br />
　『はーい』<br />
<br />
　謎の（？）男が言うと、響と奏は素直に口を揃えた。<br />
<br />
　「名残惜しいが……来年、また会おう」<br />
　「ばいばーい」<br />
　「…良い夜を」<br />
　<br />
　謎の男はそう言って地を蹴ると、屋敷の屋上へと着地した。<br />
　そして、二人に背を向けたまま、優雅に手を振る。現われた時と同じようにドライアイスが噴射され、謎の（？）男の姿がその中へゆっくりと消えていく。<br />
<br />
　その時、<br />
<br />
「カール、また明日ねーーー！！！」<br />
　<br />
　奏がそう言った瞬間、周囲の空気が凍りつき、謎の（？）男の姿は突然消えて、二度と現われなかった。<br />
　<br />
　リハーサルでは空に向かって飛んでいき、最後にまた「HAPPY　HALLOWEEN！」と言って去って行く筈だった。と、いうことは……。<br />
<br />
　足を踏み外して屋根の向こう側に落ちたのでしょうね、とソロモンは考えていた。<br />
<br />
<br />
　　　＊　　　＊　　　＊<br />
<br />
　ソロモンがカールの部屋に行くと、いつの間に着替えたのか、アオザイ姿のカールが、電気もつけずにベッドの上で脚を抱えて小さくなって座っていた。<br />
　カールは俯いたまま、呟く。<br />
<br />
「僕の正体に気づくとは…やはりディーヴァの子だ…聡いな」<br />
<br />
　一人称が『僕』になってしまっていることから、余程意気消沈しているのだろう、とソロモンは思いながら、カールの隣に座る。<br />
　間近に見える、カールの落ち込んだ姿すら魅力的に見えるのだから自分は相当の重症だ…とどうでもいいことを考えながらも、ソロモンは幼い姫二人のことを思う。<br />
　本当は響も奏も大分前からファントム＝カールと気づいていた。しかしどうやらカールはファントムの正体はバレていないと思っていたようだったから、「バレていますよ」と言うのはなんだかカールが可哀相なので今まで黙っていたのだ。<br />
　声をかけようとソロモンが口を開くと、カールはそれを手で制する。<br />
<br />
　「いいんだ、ソロモン。きっとこうやって子供はレディになっていくんだ……。来年からは、私はファントムをやれないな」<br />
<br />
　ファントム＝カールとわかった上でも、響と奏の二人は、『ファントム』とのハロウィンを十分楽しんでいた。来年もファントムをやればきっと二人は喜ぶだろう。ソロモンはそう考えたが…それを言葉にすることはなかった。<br />
<br />
　「それで、いいじゃないですか」<br />
<br />
　代わりに口にしたのはそんな言葉だった。<br />
<br />
　「何？」<br />
　<br />
　ソロモンが言えば、カールは訝しげに顔を上げる。やっと自分を見てくれたカールに、ソロモンはにっこりと笑った。<br />
<br />
　「来年からは、二人だけのハロウィンをしましょうよ。…響と奏は、他の兄弟に任せて」<br />
<br />
　如何に主の娘達といえど、自分とカールの時間を奪う存在を払えるならば、ソロモンは手段を選ばない。<br />
　カールが可哀相だという理由で、カールとのハロウィンの夜を主の娘達に譲っていたが、ハロウィンと言えば、カールがもっとも表情を輝かせる日の一つ。そんな日のカールを目に写すのは自分という存在だけでいい。<br />
<br />
　「…とんでもない騎士だな」<br />
　<br />
　ソロモンの意図が読めたのか、カールが揶揄するように言うと、ソロモンは喉の奥でからからと笑った。<br />
<br />
　「貴方を手に入れる為なら、何でもしますよ。特に…」<br />
<br />
　ソロモンはカールの顎に手をやり、自分の方へと向かせた。<br />
　<br />
　「貴方との、ベッドの為なら」<br />
<br />
　空いたもう片方の手でカールの細腰を抱きながら、ソロモンは誘うような音色を喉の奥から響かせて、言う。<br />
　カールはそれに応えるように、笑みを浮かべてから、<br />
<br />
　「おかしいな。外に魔除けのランタンを作っておいたというのに……。何故悪いものが入ってきている？」<br />
<br />
　窓にかけてあるランタンに目をやった。<br />
<br />
　「僕には効かないみたいですね。幸運なことに」<br />
<br />
　カールの腰にやった手を妖しく蠢かせながら、　<br />
<br />
　『TRICK　OR　TREAT』<br />
<br />
　ソロモンがカールの頭の中に話しかければ、<br />
<br />
　「残念ながら、今は、手持ちがないんだ…」<br />
<br />
　カールはソロモンの頬に手をやった。<br />
<br />
　「私でどうだ？」<br />
<br />
　その答えにソロモンは満面の笑みを浮かべる。<br />
<br />
　「HAPPY　HALOWEEN」<br />
<br />
　ソロモンの言葉に、同じ言葉を返そうとしたカールの唇を、ソロモンのそれが塞いだ。<br />
<br />
<br />
終<br />
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<br />
　少し遅れましたが、はっぴぃはろうぃんｖｖｖ<br />
　BGM「バンザイ！ヴィランズ！」]]> 
    </content>
    <author>
            <name></name>
        </author>
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    <id>bloodnovel.blog.shinobi.jp://entry/64</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://bloodnovel.blog.shinobi.jp/%E3%82%BD%E3%83%AD%E3%82%AB%E3%83%AB%EF%BD%93%EF%BD%93/%E6%B8%87%E6%9C%9B%E3%80%81%E9%A6%B3%E8%B5%B0%E3%80%81%E3%81%9D%E3%81%97%E3%81%A6%E5%BF%AB%E6%A5%BD" />
    <published>2008-06-24T22:20:10+09:00</published> 
    <updated>2008-06-24T22:20:10+09:00</updated> 
    <category term="ソロカルＳＳ" label="ソロカルＳＳ" />
    <title>渇望、馳走、そして快楽</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[＊吸血シーン有り。<br />
<br />
　<br />
<br />
<br />
　まさか、これ程重症の貧血に自分がなるとは思っていなかった。つい最近血を飲んだばかりだというのに。<br />
　ソロモンは視界が歪む中、よろよろとしながら壁に手をつき、静かな廊下を歩いていた。<br />
　急に、「ソロモン、血が欲しいわ」と主に言われ、「仰せのままに」と答えたのがいけなかった。主は余程空腹だったのか、容赦なくソロモンの血を大量に、一気に飲んだのだ。おかげでこの有様である。<br />
<br />
　主に血を飲まれながら、ひょっとしたらこのまま自分はこの世とお別れかもしれない…と意識が混濁する中、カールが近くを通りかかったのが霞む視界の中で見えた。が、カールは少しの間ソロモンを見てから通り過ぎて行ってしまった。まさか主が騎士を殺しはしまいとカールが思ったのはわかる。カールの性格からして、主の食事を邪魔するわけがない。（実際主は、ソロモンの命が取り返しのつかない事態になる前に血を吸うのを止めている）だが、薄情者、と一瞬だけ思ってしまったのは秘密である。<br />
　<br />
　一気に血を失ったせいなのか、主が去った後、ソロモンはしばらく動けなかった。誰か助けに来てくれないかと希望を持ったものの、兄は遠い異国の地にいるし、ネイサンとジェイムズは追いかけっこの真っ最中だ（正確には、ジェイムズがひたすらネイサンから逃げていた）頼みの綱はカールだけだったが、一向に来る気配がなく、ソロモンは最後の力を振り絞って立ち上がったのだ。<br />
<br />
　ああ、カール。この哀れな義兄に少しは優しくしてくれますか？<br />
<br />
<br />
<br />
　　　<span style="font-size:220%">渇望、馳走、そして快楽</span><br />
<br />
<br />
<br />
　カールは濡れた黒髪を軽く乾かしてから、ポニーテールに結う。<br />
　それから巨大な冷蔵庫から輸血用の血液のパックを四つ、氷と水で満たされた器に移すと、それを持って自室に移動した。<br />
　机に器を置くと、カールはアオザイの左袖を軽く捲って腕時計を見た。<br />
<br />
（五分後ぐらいか？）<br />
<br />
　カールはそう予想すると、本棚から適当に本を選んでベッドに座って読み始めた。<br />
　窓からは透き通った昼の空が見え、その隙間からはネイサンがジェイムズを追いかける声が入ってきた。午前中から、ジェイムズが言う所の「発情期状態」のネイサンからの、ジェイムズの逃走劇が続いていたことは知っているが、二人の間に介入してはいけないことはよくわかっている。どうしようもない。<br />
<br />
　カールは何度も読んだ本のページをさらさらとめくる。その本の中で一番有名な台詞の上をカールの視線が通り、後に続く「A rose by any other name would smell as sweet」の部分を読んだ瞬間、部屋のドアが控え目に開かれる音がした。<br />
<br />
　カールが視線を上げると、そこには亡霊のような顔色をしたソロモンが立っていた。<br />
　カールが再びアオザイの左手をめくって腕時計を見ると、五分後ぐらいか？　と予測した時に見た時刻から、丁度五分経っていた。<br />
　カールが輸血用の血液パックの入った器が置いてある机を見る。<br />
　カールのその目の動きに従ってソロモンもちらりと机を見てから、<br />
<br />
「まずいので嫌です」<br />
<br />
　震える声だが、しかしはっきりとそう言ってベッドに倒れこんだ。<br />
<br />
「あなたの血が飲みたい……」<br />
<br />
　ベッドにうつ伏せになったまま、ソロモンが言う。<br />
<br />
「ならそのまま永遠に起き上がらなくていい」<br />
「ああ…どうかあなたを残して逝く僕を許してください…」<br />
<br />
　これだけ喋れるなら命の危機に瀕しているわけではないだろうとわかっていたが、カールは、<br />
<br />
「全くしょうがない奴だな…」<br />
<br />
　立ち上がって、輸血用の血液パックを手に取って飲み始めた。<br />
　ソロモンが顔を上げて弱々しく微笑みながら、カールの背中を見たのが、正面にある鏡の端に見えた。<br />
<br />
『笑うな』<br />
「笑ってませんよ。ちっとも」<br />
<br />
　一つ目のパックを呑み終わると、カールは二つ目のものも一気に飲み始めた。飲み終え、唇についた血液をぺろりと舐める。<br />
<br />
「…どいてくれ」<br />
<br />
　カールがそう言うと、ソロモンはベッドの隅まで移動する。<br />
　アオザイの飾り紐を解きながら、カールはソロモンの背を向けてベッドに横になった。<br />
　ソロモンが血を呑みやすいように、アオザイを下げてやる。<br />
　するとすぐにソロモンの指先が首筋に触れてきた。<br />
<br />
「…ありがたく飲め」<br />
「飲みすぎには万全の注意を払うとしましょう」<br />
<br />
　カールはゆっくりと深呼吸をした。力が入ると痛い思いをするのは自分だ。<br />
<br />
＊　　　＊　　　＊<br />
　<br />
　先程、輸血パックから血を呑み終わった時、カールが唇に残った血液をぺろりと舐めた瞬間から、少しずつ理性が崩れていく音が聞こえた。<br />
　飢えた身体が血液を骨の髄から欲していたし、カールの命の流れを自分の中に得ることが出来るという事実に、二つの欲望が大きく動き出していた。<br />
　カールが数回深呼吸したのを確認してから、ソロモンはカールの首筋に、吸血用に変形させた刃歯を当てた。繊細な肌に当てた歯は、角度を間違えれば滑ってしまいそうで、カールの皮膚に対して垂直になるように位置を調整する。<br />
<br />
『…いいですか？』<br />
『いつでも』<br />
<br />
＊　　　＊　　　＊<br />
<br />
　ぐっ、と力が入ったと思った瞬間に、ソロモンの歯が皮膚を破って、首の血管内に侵入してくる。昔はこの瞬間にどうしても力が入ってかなり痛い思いをしたが、最近は力を抜くのにも慣れてきた。血液が吸い上げられていく感覚の中、カールは目を閉じる。しばらく力を抜き続けておかなければいけない。<br />
<br />
　人間の血を吸う時と、シュヴァリエの血を吸う時ではやり方が違う。人間と違って、損傷した皮膚、筋肉組織、血管がすぐに再生され始めるので、常に歯を動かしていかなければいけない。吸われている方は、吸血が終わるまで首の中で歯を動かされるのに耐えなければいけない。<br />
　だから、ソロモンが先程から歯を絶え間なく動かしているのは、そういう理由なのだと、カールは理解していた。だが。<br />
<br />
「…んっ…」<br />
　<br />
　カールの唇の隙間から、思わず艶がかった吐息が漏れる。<br />
　ソロモンの血の吸い方は、明らかにおかしいとカールは思っている。必要以上に、かき回すように皮膚の下で蠢く歯の動き、カールを追いやるものにしか思えない。<br />
　気付けば腰の上にやられていたソロモンの手の上に、咎めるように手を置くと、すぐに五本の指に絡め取られてしまった。<br />
<br />
＊　　　＊　　　＊<br />
<br />
　興奮していないと言えば嘘になる。<br />
　首筋に歯を立てて口にするカールの赤い液体が、飢えたシュヴァリエの口にする食事、というだけのものになる筈がない。ざらついた舌の上に広がるそれが、ソロモンの味覚を刺激して、喉の奥へと落ちていく瞬間に、恍惚にも似た感情が呼び醒まされる。<br />
<br />
　目の前には、痛みを避ける為に力を抜き、無防備なカールの顔。首筋から香るカールの血液。そして耳を抜けていくのは、時折乱れるカールの吐息。馳走を乗せた舌と、それを飲み込む瞬間の喉の感覚。<br />
<br />
　五感の全てをカールに支配されているこの状態で、冷静いられるわけがない。我ながら意地が悪いとは思いながらも、カールの皮膚の下で、カールを追い詰めるように歯を動かす。<br />
　おそらくは我慢しているのだろうが、それでも漏れてしまう乱れたカールの吐息に、ソロモンの背筋を昂ぶる感情が走っていく。<br />
　もっとカールを乱したくて、歯を皮膚のより下へと沈み込ませると、カールの目じりに力が入ったのが見て取れた。<br />
<br />
＊　　　＊　　　　＊<br />
　<br />
　気持ちがいいのは、血を吸っているのがソロモンだからだろうか、と頭を覆う快楽の下でぼんやりと考える。それをソロモンに言ってしまえば調子に乗るだろう（ただでさえ乗っているのに）ということはわかっていたから口にはしないが、ソロモンに血を吸われたいという欲が自分にあるということに気付いたのは、だいぶ昔の話だ。<br />
　だから、自分は……。<br />
<br />
＊　　　　＊　　　　＊<br />
<br />
『いつまで吸ってる気だ。私に死ねと言うのか』<br />
<br />
　頭の中にカールの声が聞こえて、<br />
<br />
『…そんなに、吸ったつもりはないのですが』<br />
<br />
　カールの頭の中にそう答えながらも、ソロモンは血を吸い続ける。<br />
<br />
『…正直、辛い』<br />
『…わかりました』<br />
　<br />
　ソロモンはゆっくりと歯を抜いてから、カールの皮膚に残った血液を舐め取る。名残惜しいと思いながらも、屈めていた上半身を起き上がらせる。<br />
<br />
「ご馳走様でした」<br />
「…だいぶ顔色は良くなったみたいだな」<br />
<br />
　カールはソロモンの方を見ながら、手を伸ばしてソロモンの頬に触れた。<br />
<br />
「…おかげさまで」<br />
<br />
　ソロモンがそう言って微笑むと、カールはアオザイの飾り紐を結いなおし、上半身を起き上がらせた。<br />
<br />
「ねぇ、カール。最初から、こうなるとわかっていて、準備してくれたんですね？」<br />
「…何故そう思う？」<br />
「髪に触れた時…ほんの少し湿っていました。それに肌の感触からわかりました。あなたは最初から僕に血を飲ませてくれるつもりだった。だからシャワーを浴びたのだと…ね。最初から輸血パックは僕に飲ませる為ではなく、自分で飲む為だった。…僕に血を飲ませることであなたが貧血になるのを防ぐ為に」<br />
「それで私に『そうだ』と言わせたいのか？　性格が悪いな」<br />
「いえ。顔を赤らめながら、『別にお前の為というわけじゃ…』って言って欲しかったんです」<br />
「誰が言うか」<br />
<br />
　そう言ってから、カールは、じぃ、とソロモンを見つめた。<br />
<br />
「…今、あなたが僕と同じことを考えたと、そう思ってもいいのでしょうか」<br />
「…どうかな」<br />
<br />
　互いに先程までの行為で昂ぶっているのは確かだった。<br />
　食欲は満たされても、煽られた別の欲望は返って餓えて目の前にいる存在の確かな熱を求めている。<br />
<br />
「同じかどうか、試してみないか」<br />
「…あまり僕を煽らない方がいいですよ」<br />
<br />
　言いながら、ソロモンはカールの首筋に手をやる。<br />
<br />
「…いつだって、僕があなたを『食べる』時は…過食症気味なんですから」<br />
<br />
<br />
<br />
終<br />
<a href="http://bloodnovel.blog.shinobi.jp/Entry/1/">戻る</a><br />
<br />
<br />
BGM：人生美味礼讃<br />
<br />
<br />
　カールニ周忌用作品。<br />
　＊名目上一応１５禁サイトの限界を見ました。<br />
<br />
<br />
　うわああああんカール好きですカール……（管理人暴走中）37話から二年とか…。またカールが動いてる所が見たいです。BLOOD+もう何かやらないのでしょうか。<br />
　もうSS書いててどれだけ自分がカール好きかまた実感したというか…。もうソロモン羨ましいですよ。だってカールの血飲んでしかも…カールの肌（以下自重）<br />
　カールいなかったら今卒論の小説とか書かなかったんだろうなと考えると、本当この人に左右されてる人生だと心から思います。<br />
　ソロカルの時の経験がなかったら多分、ロロルルロロにも手はだしてなかったと思います。<br />
<br />
　<strong>カール好きだーーーーーーー！！</strong>！（絶叫）]]> 
    </content>
    <author>
            <name></name>
        </author>
  </entry>
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    <id>bloodnovel.blog.shinobi.jp://entry/63</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://bloodnovel.blog.shinobi.jp/%E3%82%BD%E3%83%AD%E3%82%AB%E3%83%AB%EF%BD%93%EF%BD%93/%E7%8F%88%E7%90%B2%E3%81%AF%E9%97%87%E8%89%B2%E3%81%AE%E8%96%AB%E3%82%8A" />
    <published>2008-05-12T23:36:29+09:00</published> 
    <updated>2008-05-12T23:36:29+09:00</updated> 
    <category term="ソロカルＳＳ" label="ソロカルＳＳ" />
    <title>珈琲は闇色の薫り</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[　某サイト様の絵を見る　→　コーヒーっていいな　→コーヒー＝ゴドー検事だ！　→ゴドー検事＝『珈琲は闇色の薫り』だ！（テーマ曲）　→『珈琲は闇色の薫り』を聞く　→　ああ、ソロカルでほろ苦いオフィスラブとかありかも…　という経緯で書いたＳＳです。細かい所はあまり突っ込まないでくださいw　＊タイトルは逆転裁判３の曲名より拝借<br />
<br />
<br />
<br />
　　<span style="font-size:220%">　珈琲は闇色の薫り</span><br />
<br />
<br />
<br />
　ビルが群れをなす街の一角に、その会社はあった。<br />
　マジックミラーで囲まれたビルは午後の晴天を映して、青く染まっている。カール・フェイオンは青いビルの三十階にある自分のオフィスにいた。<br />
　この日のカールのスーツはダークグレー。長い髪は今日も隙のない、黒く艶やかな直線を描いていた。<br />
　難しい仕事が一段落つき、安堵の息を吐きながら、カールはコーヒーを淹れる。その濃厚な薫りに鼻腔をくすぐられながら、カールがカップを手にしようとした時、オフィスにノックの音が響いた。<br />
　カールは顔を上げて、どうぞ、と告げる。<br />
　ドアが開き、そこから顔を覗かせた人物に、カールは目を見開いた。<br />
「こんにちは」<br />
　そこに立っていたのは、白いスーツを着た、金髪碧眼の男性――ソロモンだった。<br />
　カールが目を見開いたのには理由がある。本来、ソロモンは此処にいてはいけない人間なのだ。二人は学生時代、恋人同士だったが、目指すところが違って、互いにライバル会社に入社することになってしまった。つまり、今この状況は、ライバル会社の社員が、真昼間に堂々と乗り込んで来たということである。<br />
「おまっ」<br />
「しー。大声は出さない方がいいですよ」<br />
　ソロモンは唇の前で人差し指を立てて、カールの横まで優雅に歩みを進めた。<br />
「何故ここに」<br />
「こちらでちょっとした交渉事がありまして…先程、早めに終わったので、ついでに寄らせて貰ったんですよ」<br />
　カールが声を抑えて訊くと、ソロモンは何事でもないかのように、微笑みながら答えた。<br />
「『ついで』に寄っていい場所ではないと思うが」<br />
「これは手厳しい…学生の時はあんな甘い時間を過ごしたのに」<br />
「学生時代と今は違う」<br />
　ソロモンと会う事が出来て、内心カールが嬉しくなかったかと言えば嘘になる。だが、互いに社会人としての立場がある以上、浮かれた姿は見せられなかった。<br />
　ソロモンはカールが淹れたコーヒーのカップをちらりと見てから、<br />
「僕達の関係は、さながらこのコーヒーのようですね」<br />
　カップを手にとり、飲んだ。砂糖もミルクも入っていない、濃厚なブラックを。<br />
　座っているカールからは見えなかったが、ソロモンが唇をつけた所から、コーヒーの闇色に小さな波紋が出来る様子を想像して、<br />
「砂糖は、いらないのか」<br />
　カールは意味ありげに、首を傾げて言った。<br />
「…頂いていきましょうか」<br />
　ソロモンはカップを置き、腰を屈めて、カールの顎を指先で引き寄せる。<br />
　コーヒーの薫りが深くなった、とカールが思った瞬間にはキスが始まっていた。カールはソロモンのスーツの袖にそっと触れる。背中にまで手を伸ばしたかったが、それをやると、お互いに悪い方向に気分が盛り上がるのは目に見えていた。ソロモンまたもう片方の手はカール肩に軽く置いているだけだ。<br />
　久しぶりのキスは、自分が覚えていたものよりも、遙かに苦かった。<br />
　ソロモンは一瞬だけ寂しそうな顔をカールに見せてから、<br />
「…あまり長い間いて、嫌われても困りますからね」<br />
　そう言って、立ち上がる。<br />
　名残惜しかったが、仕方ない。カールは小さく、ああ、と言って見送るしかなかった。<br />
　ソロモンが立ち去った後のオフィスには、闇色の薫りが漂っていた。<br />
<br />
<br />
終<br />
<A Href="http://bloodnovel.blog.shinobi.jp/Entry/1/">戻る</A><br />
2008/5/12<br />
<br />
　<strong>これでもほろ苦いオフィスラブを目指しました。</strong><br />
<br />
　難関大学主席卒業するといきなり自分のオフィス＋秘書がつく…なんていう国もあるそうで。いいないいな。<br />
]]> 
    </content>
    <author>
            <name></name>
        </author>
  </entry>
  <entry>
    <id>bloodnovel.blog.shinobi.jp://entry/59</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://bloodnovel.blog.shinobi.jp/%E3%81%9D%E3%81%AE%E4%BB%96/%E5%B7%8C%E7%AA%9F%E5%A7%AB%205" />
    <published>2008-04-05T07:06:29+09:00</published> 
    <updated>2008-04-05T07:06:29+09:00</updated> 
    <category term="その他" label="その他" />
    <title>巌窟姫 5</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[あの時は、どうしたらいいのかわからなくなっていた。<br />
…だが、レディを泣かせたのなら、それは私の恥ずべき失態だ。<br />
<br />
<br />
<span style="font-size:220%"><br />
　　　＜巌窟姫５＞</span><br />
<br />
<br />
<br />
「あ～あ……」<br />
<br />
　夜。<br />
　ルルゥは心底残念そうな顔で溜め息をつきました。<br />
　窓から外を見てみたら、ざーーーっという大きな音をたてて、土砂降りの雨が降っていたのです。<br />
<br />
　『雨が降っている時は、集まらない。ということでいいかな？』<br />
<br />
　ファントムの言葉を思い出しながら、ルルゥはふくれて、窓を閉めました。<br />
　ファントムは容赦ない先生でしたが、それでもルルゥは毎夜の練習の時にファントムに会えるのを楽しみしていました。いつも練習が終わると色々な話をしてくれるし、たまに不思議な魔法を見せてくれることもあったからです。<br />
　それに、ファントムはダンスやマナー以外にも、沢山のことを教えてくれたのです。<br />
　仕事で手が荒れやすいルルゥの為に、身近に手に入る薬草で作れる、荒れを抑える薬の作り方を教えてくれたこともありました。他の国の歴史や文化のことを教えてくれたり、ファントムが知っている面白い話をしてくれたり、その話が何故語りつがれているのか…ということまで教えてくれたのです。<br />
<br />
　そんな楽しい時間を思いながら、ルルゥはため息をついて、自分の部屋を見回しました。自分の部屋。と、言っても箒やちりとりが一緒の、屋根裏部屋の一角でした。<br />
　せめて少しでもいい部屋にしようと、ルルゥがしっかり掃除しているので、埃はどこにも積もっていません。ルルゥは窓の近くに置いてある本をとると、部屋の隅に座って、読み始めました。死んでしまったルルゥの母親が教育熱心だったお陰で、ルルゥは簡単な文章なら読むことが出来たのです。<br />
　ファントムはいつも、<br />
<br />
『チャンスを逃さないためには、常にその準備をしていなければいけない』<br />
　と言っていて、その為にも本を沢山と読むといい、と言ってこの本をくれたのでした。一緒に古びた簡単な辞書もくれて、それも部屋の隅に置いてありました。そのお陰で、最近やっと『ヤヌシ』が人の名前ではなくて『家主』なのだと気づきました。<br />
　ファントムがくれた本は、色々な国のことが書いてある本で、ルルゥは少しづつ、少しづつ、読みすすめていきました。<br />
<br />
「あたいも色々な国に行ってみたいなぁ……」<br />
　ルルゥは呟きながら、ふと思うことがあって、本を閉じてカバーにある著者の名前を見ました。<br />
「かーる…ふぇ…？」<br />
　名前は途中で引っかき傷のようなもので消されていました。<br />
「いーなーこの人。色んな国、見てきたんだもんね」<br />
<br />
　あたいは、いつになったら色んな所に行けるようになるんだろう？<br />
　そんなことを考えていると、ルルゥは少し寂しくなってきました。<br />
　昨夜、ファントムに、<br />
「ねぇ、今はあたいの為に毎日来てくれてるけど、ダンスパーティーが終わったらファントムのどうするのさ？」<br />
と訊いたら、ファントムは、<br />
「そうだな…、私は、また旅にでてみようと思っている」<br />
　と答えたのです。本当は、ルルゥは「一緒に連れて行って欲しい」と言いたかったのですが、これ以上ファントムに甘えるわけには行かないと思い、黙っていました。今の自分がファントムについていっても、お荷物なることはわかっていたのです。<br />
<br />
　そんな風にしんみりと考えてから、ルルゥはもう一度、窓の外を見てみました。<br />
「あれ？」<br />
　いつの間にか、雨がやんでいました。<br />
　ルルゥは少し考えてから、<br />
「ファントムが来てるかもしれない…！！」<br />
　外へと駆け出していきました。<br />
<br />
<br />
＊　　＊　　＊<br />
<br />
<br />
　いつもファントムと会っている場所に行くと、<br />
「え…？」<br />
　ルルゥは思わず、立ち止まりました。<br />
　ファントムが湖を見つめながら静かに佇んでいたのです。服も髪のぐっしょりと濡れて、ほんの少しだけ、肩が震えていました。<br />
<br />
「お前に何かあったら、私はどうすればいい…？」<br />
<br />
　かすかに漏れる嗚咽に、<br />
「ファントム…？」<br />
　ルルゥが声をかけると、<br />
「！…レディ？」<br />
　ファントムが驚いて振り向きました。<br />
「何故ここに…」<br />
「雨…止んだから……大丈夫？顔色が悪いよ？」<br />
「私は大丈夫だ…」<br />
　そう言いながらも、ふらふらしているファントムに、<br />
「ねぇあんた、本当に大丈夫！？」<br />
　ルルゥがもう一度訊きました。<br />
　ファントムの見えている方の目が、虚ろになっていたのです。<br />
「……大丈夫だ」<br />
　ファントムは魂が抜けたような声で言いました。<br />
「レディ、今日は…送ることが…でき…ない」<br />
「…そんなことはいいよ！それより…！！」<br />
「私には…行かなければいけない所がある」<br />
　ルルゥが頷くのを見ると、ファントムはふらふらと歩いたかと思うと、空へと舞い上がって行きました。<br />
　ルルゥは心配そうに夜の雨空を見上げました。<br />
「…ファントム…」<br />
<br />
＊　　　＊　　　＊<br />
<br />
　雨の夜以来、ルルゥはファントムに会うことが出来なくなってしまいました。<br />
　夜、いつもの場所で待っていても、ファントムは来なかったのです。<br />
　何日も何日も、ルルゥはあきらめず、毎日、約束の時間になるといつもの場所で待っていました。酷い風邪でもひいたんじゃないかと、ルルゥは心配で仕方がなかったのですが、ファントムの家の場所は知りませんでしたし、この場所以外でファントムに会ったことがなかったので、ルルゥはここで待つ以外にどうすることもできませんでした。<br />
　自分の行動できる範囲で、何かファントムに繋がる噂話などがないかと思ったのですが、全くなかったのです。<br />
　それでも、ルルゥはファントムがいなくても、しっかりダンスの練習は続けていました。<br />
<br />
「…ファントム…」<br />
　一人呟いても、ファントムがやってくる気配がありませんでした。<br />
「あたい……」<br />
　ルルゥの頬を、一粒の涙が流れていきました。<br />
　このままずっと会えないの？と思った瞬間、<br />
「お嬢さん」<br />
「！」<br />
　若い男の声に、ルルゥは思わず顔をあげました。<br />
　そこにいたのは、ルルゥが会いたくて仕方のない人物ではありませんでした。白の長いローブを着ていて、フードを目深に被っているので、口元しか見えない…と思った瞬間、男はフードを少し上にあげました。ファントムとデザインが左右逆の白い仮面をつけていました。ほんの少しだけ、金髪がフードからでています。<br />
「貴女はひょっとして、ファントムを待っているのではありませんか？」<br />
　ファントムで仮面の男に慣れていたとはいえ、ルルゥは突然の見知らぬ仮面男の登場に、硬直してしまい、男の問いに答えることができませんでした。<br />
「…すみません。どうやら驚かせてしまったみたいで。僕はファントムの友人で…。あなたを探していたのです」<br />
「ファントムの友達…？」<br />
<br />
　ルルゥはしばらく呆然としていましたが、「ファントム」という名前にはっ、として、勢いよく立ち上がりました。<br />
「ファントムは！？ファントムは大丈夫なの？」<br />
　ファントムのことを訊きました。<br />
「ええ。少し熱をだして寝ていますけど。大丈夫ですよ」<br />
「良かった…」<br />
「カー…。ファントムは、あなたにそのことを伝えたくて、僕を寄こしたのです。まだ静養する必要がありますから、しばらくこちらには来られないと思いますが…。どうかご心配なく…だから、もう泣かないで。ファントムが言っていましたよ。貴女の笑顔は本当に素敵だと。だから…ね」<br />
　男はハンカチでルルゥの涙を拭いてやりました。<br />
<br />
「貴女の素敵な笑顔が見られたと、どうかファントムに報告させてください。彼も安心します」<br />
　ルルゥは、少し無理して微笑みました。<br />
「ありがとう。しっかり報告しますね」<br />
　男のその言葉にルルゥは、<br />
「あんた…ひょっとして、ファントムの『家主』さん？」<br />
　訊いてみました。男は少し考えてから、<br />
「まぁ、そういうことになりますね」<br />
　答えました。<br />
「ねぇ、あたいを雇って！掃除でもなんでもするから！」<br />
　ルルゥは頭を下げて言いました。<br />
　『チャンスを絶対に逃してはいけない』というファントムの言葉が、ルルゥの頭の中に響いたのです。<br />
<br />
「………」<br />
　男は面食らったように、何も言いませんでした。<br />
「なるほど。ファントムが気にいるわけです」<br />
　男は手を自分の顎にあてて、しばらく考えました。<br />
「いいでしょう…。ただ、それには二つ、条件があります」<br />
「条件？」<br />
「貴女が今成すべき事を、しっかりやり遂げてください」<br />
「…ダンスパーティーにちゃんとでろ、ってこと？」<br />
「そうです…誰に恥じることのない立派なレディとして、パーティーにでてください」<br />
「…わかった。もう一個は？」<br />
「お許しいただきたい事があります」<br />
「許すこと？」<br />
「おいでチャールズ」<br />
　男が言うと、少し離れた木の裏からルルゥの宿敵の、あのデブ猫がでてきました。あいかわらずふてぶてしい瞳をしています。<br />
「ああ～～！！」<br />
　ルルゥが指差して叫ぶのを尻目に、猫は男の足元でごろごろと喉をならしながら、頭を男の足首あたりにこすり付けました。しかし、ルルゥの方を一瞬見た猫の目が「何見てんだテメェ」という目だったのを、ルルゥは見逃しませんでした。<br />
<br />
「この子は僕の猫なんです…。もしご無礼があったら許してやってください。ファントムが言っていたんです。この子があなたに迷惑をかけたと」<br />
「あ、あんたの猫だったの！？」<br />
「もう悪いことはしませんよね。チャールズ」<br />
　男がしゃがんで猫の頭を撫でると、猫はまたしてもごろごろと喉をならしました。ですが、あいかわらず、男の隙を見てルルゥにガンを飛ばすのをやめようとはしません。<br />
「この子はどうもカー……、ファントムが相手だと、じゃれてしまって…。きっと、貴女からファントムの匂いがしたから、じゃれてしまったんだと思います」<br />
「じゃれ…！？」<br />
　「じゃれる」という言葉を遙かに超える被害を受けていたルルゥの頭には、猫とその飼い主に言ってやりたい罵詈雑言その他沢山がありましたが、一瞬で職と怒りを天秤にかけて、<br />
「わかった…許す！」<br />
　許してやりました。不良猫が勝ち誇ったように笑ったような気がしましたが、ルルゥは気のせいだと思うことにしました。<br />
「よかったですね。チャールズ。貴方は先に帰っていてください」<br />
　男が言うと、お役目御免とばかりに、どうやらチャールズというらしい猫はさっさといなくなってしまいました。<br />
<br />
「それでは、ボクもおいとましなければ。あまり長いこと外にいてはいけない身なので」<br />
「あ…ちょっと待って！」<br />
「？」<br />
「ファントムに…、あたいのことは心配しなくていいから、ちゃんと風邪治すようにって言っておいて！あたい、一人でもちゃんと頑張れるから！！」<br />
　男は微笑んで、<br />
「…わかりました。伝えておきます」<br />
　森の闇の中に姿を消しました。<br />
「…あ…」<br />
　ルルゥは、ぽかんと口を開けました。<br />
「名前訊くの忘れた…。ファントムがいる所もーーーーーーーーー！！」<br />
<br />
<br />
<br />
 <br />
<br />
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]]> 
    </content>
    <author>
            <name></name>
        </author>
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    <published>2008-04-05T07:05:40+09:00</published> 
    <updated>2008-04-05T07:05:40+09:00</updated> 
    <category term="未選択" label="未選択" />
    <title>巌窟姫 4</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[　…私が、今、やるべきことは……。<br />
<br />
<br />
　　　<span style="font-size:220%"><br />
＜巌窟姫 4＞</span><br />
<br />
<br />
<br />
　ファントムは厳しい先生でした。それでもルルゥはそのレッスンにしっかりついていきましたし、毎夜毎夜、ファントムに会えるのを楽しみにしていました。そうやって、数ヶ月がすぎたある日……。<br />
<br />
　ちりん、と嫌な鈴の音がして、モップで床を拭いていたルルゥは顔をあげました。その先には、数ヶ月前にルルゥから食べ物を奪っていった憎たらしいデブ猫が、ルルゥを（見上げているのに）見下すような視線を向けてきていました。<br />
「あんた…、また来て…、ああああ～！？」<br />
　ルルゥは叫びました。ルルゥがせっかく掃除した床に、デブ猫が汚い足跡をあちこちにつけていたのです。<br />
「出てけーーーーーー！！」<br />
<br />
　ルルゥは怒鳴りましたが、デブ猫は出て行く気配が全くありません。それどころから口の中から、林檎の種らしきもの何粒もぺぺぺ、と吐き出しました。そのふてぶてしい態度にルルゥは、<br />
「こんのデブ猫―――――！！」<br />
　デブ猫を捕まえようと追いかけました。<br />
　猫は体の大きさに似合わず軽やかに身を翻して、逃げていきます。<br />
<br />
「待てーーーー！出てけって言った時は動かなかったくせにーーー！」<br />
　猫はリビングを横切って、玄関の方へと駆けていきます。<br />
　玄関のドアは、デブ猫がなんとか通れる程度に開いていました。<br />
　ルルゥは、あ！と声をあげて、立ち止まりました。玄関の外ではたしか、継母とその友人が、立ち話をしているはずだったのです。<br />
<br />
（あたいがでていくとまずいしな…）<br />
　ルルゥは、勝ち誇ったように尻尾を振ってでていく逃亡者に、<br />
「二度と来るな」<br />
　歯噛みしながら、精一杯の捨て台詞を吐きました。足跡だらけになった床をまた掃除しなければいけないので、ため息をつきながら、ルルゥは周りを見回します。<br />
<br />
「また掃除だよ…」<br />
　モップを取りに戻ろうとした時、<br />
『ええ！そんな…！』<br />
　ドアの外から悲鳴じみた声が聞こえてきました。<br />
「なんだろう…？」<br />
　ルルゥは、ドアに近づくと、耳をすませます。女性数人の噂話が聞こえます。<br />
『陛下の具合はそんなに悪いの？』<br />
『そう、だいぶ前からお加減はよくなかったようなのだけれど…最近、また急に悪くなってしまったらしくて。この話、秘密にしておいてね』<br />
『まだお若いのに…。世継ぎもまだいらっしゃらないのでしょう…？』<br />
『その前にお后様がいらっしゃらないから…』<br />
『そういえば、陛下と宰相の間で、そのことで口論があったという話を聞いたわ…』<br />
『もし…、もし陛下に万が一のことがあったら、次の王位はどうなるの？』<br />
『そのあたりのことは、よくわからないけれど…』<br />
<br />
　王様、病気なんだ…。と思いながら話を聞いていると、足のあたりに生暖かい嫌な重みを感じて、ルルゥは下を見ました。デブ猫が足の上に乗っていました。<br />
（しっ！しっ！あんたはどっかいって！）<br />
　もっと話を聞こうとしていたのですが、猫が気になってルルゥの耳には話し声が入ってきませんでした。デブ猫は大あくびをしました。<br />
（邪魔ーーーーー！）<br />
　小声で言うのですが、デブ猫に聞く気はありません。<br />
（～～～～～っ！！）<br />
　ルルゥが猫のことを我慢することにして、話を聞こうとすると、<br />
『陛下には、恋人がいらっしゃるのよ。そういう噂が流れているの。どんな縁談も断っていらっしゃるということだから』<br />
『まぁ、禁断の愛？』<br />
　くすくすと忍び笑いが聞こえてきました。<br />
『きっと平凡な姫様方に飽きられているよ。陛下はお目が高いと聞いているから』<br />
『あら、では私にもチャンスがあるかしら？』<br />
　ルルゥが聞き入っていると、<br />
「…いっ！？」<br />
　猫に脛の辺りを引っ掻かれました。<br />
（何するんだよ！？）<br />
　小声で言うと、猫は足跡を床にべたべたとつけながら、廊下を歩き始めました。<br />
<br />
『あ！掃除しないとばばぁにまた怒られる！』<br />
　ルルゥは急いでモップを取りにいき、猫がつけた足跡の掃除を始めます。すると、猫がありえない跳躍力でルルゥの頭に跳んできました。<br />
「！？」<br />
　ルルゥは驚いて避けることができませんでした。猫は歯で何本かルルゥの髪を抜くと、そのまま走り去っていきました。<br />
<br />
<br />
<br />
　夜。練習を終えて、いつもの場所でファントムとルルゥは話をしていました。<br />
「そうかそんなことが…」<br />
「あの猫、本当に酷いんだから！」<br />
　ルルゥはかんかんに怒っていました。<br />
「私もそういう猫を知っている…。飼い主に似て、ふてぶてしいことこの上ない猫なんだ。おまけにどうも私のことを嫌っているらしい…。一度腕を引っ掻かれたことがある」<br />
「お互い、猫で苦労するね…」<br />
「そうだな…一度窓から放り出してやり…。いや、レディの前ではこれ以上は言うまい」<br />
　そう言いながらも、ファントムの口元には笑みが浮かんでいました。<br />
「でもその気持ちはわかるよ…。今度あの嫌な鈴の音が聞こえてきたらどうしよう…」<br />
　ルルゥがうんざりと言うと、<br />
「鈴？」<br />
　ファントムは身を乗り出して訊きました。<br />
「うん。前足に鈴つけてるんだ。その猫」<br />
「…あいつめ！！」<br />
　ファントムが急に立ち上がってどこかを見ながら怒鳴ったので、ルルゥは驚いて目を丸くしました。<br />
「すまないレディ…驚かせたようだ…」<br />
「……どしたの？」<br />
「おそらく私の言っている猫と、レディが言っている猫は同じ猫だ…。毛並みだけはやたらによくて黒光りしていて、人を見下したような巨大モンスターだろう？そして尻尾が長くてふさふさしている…鈴はたしか左の前足についている」<br />
<br />
　ルルゥが頷くと、ファントムは拳を握りながら怒りました。<br />
「飼い主＜あいつ＞にはあの危険な魔物を、たとえ何があっても部屋からだすなとあれほど言っておいたのに…！」<br />
「じゃあ、もし見つけたら捕まえておいた方がいいのかな」<br />
「いや…。あの猫は危険極まりない。飼い主以外の者の言うことは絶対に聞かないからな…。会ったら運が悪かったと思って諦めるしかない…。しかし、この辺りをあのモンスターが徘徊していると思うと恐ろしい」<br />
「…早く飼い主のところに戻ってくれればいいのに」<br />
「今はそれを祈るしかない…。あいつは何をやっているんだ！？」<br />
　ファントムは大きく息を吸って、吐いてから、もう一度椅子に座りました。<br />
<br />
「すまない。レディの前で取り乱してしまった…」<br />
　ファントムはもう一度深呼吸しました。<br />
「えーーと、今日はパーティーの日について話すことがあるって言ってたよね？」<br />
　ファントムが落ち着くのを待ってから、ルルゥは切り出しました。<br />
「そうだ…ドレスのこと、と言った方が正しいかな？」<br />
「どういうデザインにする、とか？」<br />
「それもあるが…、レディ、そこに立ってもらえないか」<br />
「ここ？」<br />
　ルルゥはファントムが指差した場所に立ちました。<br />
　ファントムもすぐ側に立つと、<br />
<br />
「レディ、失礼する」<br />
　ルルゥの頭に手をやってから、その高さを保ったまま、自分の体の前に移動させました。丁度、みぞおちより下のあたりでした。<br />
「率直に言うが、レディは背が小さい」<br />
「う…そうだね」<br />
　ルルゥは呻きながらも、ファントムが言ったことは事実だったので、頷きました。<br />
「年齢的なことを考えても、若すぎる…そこで」<br />
　ファントムは輝く青い薔薇を取り出しました。<br />
「ここで魔法の力を借りる」<br />
　ルルゥがそれを受け取ると、一瞬、視界が真っ白になりました。<br />
　気がつくと、薔薇を持った手をが、ファントムの手に包み込まれていて、<br />
「大丈夫か？」<br />
　心配そうに訊く声が聞こえました。<br />
「うん、だ…」<br />
　ルルゥは驚いて言葉を止めました。自分の声がいつもと違っていたのです。ファントムはいつの間にか鏡を持っていて、それをルルゥに見せました。<br />
「ええーーーーーーー！？」<br />
　そこには十代後半ぐらいの女性がいました。<br />
　身長もファントムの肩あたりまで伸びていて、いつもと違う世界の見え方に、ルルゥは驚いていました。<br />
「ドレスや髪型はまた後日話し合うとして…。パーティーに入るならそれで十分だ」<br />
「………」<br />
　ルルゥは鏡に見入っていました。<br />
「すごい…。こんなことできるんだ…」<br />
　ルルゥが感動していると、<br />
「しかし、この魔法には時間的に限界がある。今日は、二、三分で元に戻るようになっている…。ダンスパーティーなら、開始時間と準備を考えて…時計塔の鐘がなるぐらいの時間で限界だろう」<br />
「時間に気をつけなきゃいけないんだね…わかった」<br />
　そういった瞬間、ルルゥは元の姿に戻ってしまいました。<br />
「ああ～。戻っちゃった」<br />
　残念そうにルルゥが言うと、<br />
「姿が違っても、レディはレディだ…そして、よく覚えておいてほしい」<br />
「『私が当日手助けできるのは、外面的なことだけだ。仕草やダンス、そして内面から滲む雰囲気などを手助けできる人間はどこにもいない。レディを助けることができるのは、レディの日頃の努力だけだ』…だよね？覚えてるよ！」<br />
「…素晴らしい。一字一句違わないな」<br />
<br />
　ファントムが感心したように言って、椅子に座ったので、ルルゥも座りました。ファントムは、ルルゥのカップにハーブティーを入れました。<br />
<br />
「あ、この香り初めて」<br />
「カモミールティーだ。よく眠れるというからな。王族でも使っているものは多い」<br />
「そういえば、今日、うちのばば…、継母が話してたんだけど」<br />
　ルルゥは途中で訂正しました。ファントムに「さすがに『ばばぁ』という言葉を普段から使うのはまずい」と言われていたのです。ファントムは前半だけ聞こえない振りをしていました。<br />
「王様の具合があんまりよくないらしいね」<br />
「相当悪いらしい」<br />
　ファントムが深刻そうに言うので、<br />
「そんなに…？」<br />
　ルルゥは恐る恐る訊きました。<br />
「どんな病でも、本人が生に希望を持っていなければ、治らない。…そういうことだ」<br />
「あ、ばば…継母達が、叶わぬ恋をしてるんじゃないか、って言ってたよ」<br />
「噂はあくまで噂だ…そんなことより」<br />
　ファントムはカップをことり、と置いて、<br />
「王ともあろうものが、自分の立場を忘れて生きることを放棄するのは許されないことだ…彼には世継ぎいないし、今もしもの事があれば。混乱が起こる」<br />
「うーーん…でも…」<br />
　ルルゥが考え込みながら、<br />
「生きていたくない、なんて、どうして思ったんだろうね。王様……」<br />
「それは……」<br />
　ファントムは何か言おうとして、口を閉じてから、<br />
「……彼のみぞ知ることだ。レディ」<br />
　厳かに言いました。<br />
「そうだね。…でも、人が死ぬのは嫌だよ」<br />
「…それは私も同じだ」<br />
「…だって、死んじゃったら、『ありがとう』って言えないんだもん…あたい、もっとママに、『ありがとう』って言いたかった。だから…王様、元気になるといいね…」<br />
「………」<br />
　ファントムは静かにハーブティーを飲みながら、しばらく何も言いませんでした。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
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